第135話 終結

 魔法士たちがやって来たので、俺は森に引きこもりました。


 魔方陣の教科書ともいえるものは作ってありますから、魔法はイメージだということを学んでもらって、魔方陣の基礎さえ覚えたらさっさと帰ってもらうようにフランクたちにお願いしている。


「あとはよろしくね! ではごきげんよう」


「何がごきげんようだ。お前はまた森で好き勝手に物を作るんだろう?」


 良く分かってらっしゃる。フランクは以前の休暇の時の森での出来事があれば当然そう思う。


 フランクは近づいてきて小声で


「おい、飛行船を完成させても勝手にどこかに行くなよ。それと余計なものはこれ以上出来るだけ増やすな。森から出さなければいいと思うなよ。俺たちが見たら売りたくなるし、使いたくなる。頼んだぞ」


 そうだよね自転車なんて乗りたいよね。分かるけどまだ世の中には出せない。だったら作るなよと突っ込みが入りそうだが、それはできないのよ、作りたいし乗りたいから俺が……。


 今回魔法士の滞在がどれくらい掛かるか分からないから、病院の方の治療も大体済ませて、教育はニックに指示を出してやってもらうことにしました。


 病院の方も最近はそれ程多くの患者がいない。基本重病や重症患者だけですから、このラロックまでくる患者は多くない。


 ですから、医者候補の生徒たちはもっぱら細菌の研究やそれに伴った薬の研究をしながら、手術の練習や臨床実験を魔物でやっている。


 以前サラの背骨の再生方法で困ったことがあるように、場所によって再生で不都合が出てはいけないので、いろんなパターンを検証してもらっている。


 この先この病院はこのパターンで落ち着くと思う。患者はだんだん減って行き、医者候補はここで、基礎知識と基礎技術を習得して巣立って行き、ここは医者の教育施設兼、研究施設になるでしょう。 前世の大学病院だよね。


 巣立って行った医者は研究をすることが減り、実務が殆どになり、新しい薬や治療法などはこの病院が発信源に成って行く。


 逆に未知の病気や治療が難しい症状の患者が出れば、ここに連絡するか、患者を送ってもらえばいい。


 今は緊急を要するから、1年という短期間で医者になってもらうが、将来的には3~4年を目途に医者の資格が取れるぐらい資格試験も難しくして行く予定。


 そうなると薬師だけという人も増えてくると思う。医者になるのに時間が掛かるようになれば、当然裕福でないとそんな時間学んでいられない。


 勿論、裕福ではないから薬師になるだけで、学校に来た人の中に優秀な生徒がいれば奨学金ではないが特待生として医者になる道を得られるようにはする。


 森の引きこもるのに際して、魔法士のことだけを任せてきたわけじゃない。今回の問題の発端であるオックスの飼育についてもお願いしてきた。


 今現在は、オックスをいくつかの群れに分散して放置してるので、ラロックで飼育する分を除いて、魔法士たちが帰るときに領都と王都に連れて行ってもらう。


 その為に領都と王都では急ピッチで飼育用の牧場が建設されている。


 以前のスライム養殖場建設で、土魔法士たちの習熟度がかなり上がっているから建設も早くなるだろう。


 しかし連れて帰るのは牧場もできてるだろうから問題ないとしても、王宮魔法士に飼育させるのだろうか?


 俺はその点も考えている。牧場主を育てるつもりでいる。


 ティムの魔法はイメージ力も必要だが魔方陣を使えばそれなりに補填できるので、今現在、畑仕事用にオックスを農耕牛として飼っている人にプチパワーレベリングをしてMPを上げてもらって、ティムの魔法を使えるようになってもらう。


 極端なやり方だが職業を農業から牧畜に変えてもらうつもりだ。


 正直農業よりは収入は増える。だって牛乳がもたらす乳製品は農作物などと比べ物にならないぐらい売れる事は目に見えている。


 他に肉としても売れるし自分で食べることもできる。これほどおいしい職業転換だったら嫌とは言わないだろう。


 それには乳製品の加工方法も教えないといけない。勿論、これも特許登録を早急にしないとオックスを飼育する意味がない。


 とりあえずは、バターとチーズだけでいいかな? ヨーグルトは乳酸菌からだからめんどくさい。


 バターとチーズが出来たら料理がまたおいしくなるけど、この世界の料理人にそれが出来るだろうか?


 簡単な応用方法はレシピ本として出してもいいが、それだと料理人たちの進歩がないんだよな。


 ケインは俺との付き合いが長いから、それなりに最近は自分で工夫した料理を作るようになったけど、他の料理人はそうではない。


 教えられたものは作るけど、自分で改良や新しい料理を作ろうとはしない。


 それには調味料が少ないというのも理由の一つ。


 やっぱり醤油と味噌をそろそろお披露目するかな? しかしこれ以上忙しくなっても嫌だからもう少し様子を見るか?


 このまま色々考えて行動してると、いつものように料理学校とかに発展しそうで怖いので、俺はこれ以上考えないようにした。



「良かった、やっぱりここなら魔法を教えられる人が多いから俺の負担が全然少ない」


 ラロックには賢者候補が7人もいるから、当然フランクは王宮の時のように付きまとわれないから精神的に追い詰められなかった。


 今回の引きこもりには途中経過を知らせてもらう様に頼んでおいた。前回のように期間を決めての休暇ではないので、魔法士たちが帰れば直ぐに普通の生活に戻りたいからだ。


 普通と言ってもやることは多い。飼育員を育てなければいけないし、賢者候補の教育も再開しないといけない。勿論、バターやチーズの料理への応用も少しは教えないといけない。本当にやることが多すぎる……。


 俺って自分で自分を社畜にしていない?


 ロイスが10日程経ったころ俺の家に報告に来た。


「ユウマさん、報告に来ましたよ」


「ロイスさん、いらっしゃい。どんな感じです?」


「特別問題はないですよ。この様子だとあと10日も掛からずに魔法士様たちはお帰りになると思います。」


 そうかそれなら、今回の引きこもりのうちに飛行船は完成できるな。


「それじゃ10日後に戻るようにします。もしその時にまだ魔法士がいるようでしたら、拠点の門のところに何色でもいいですから旗を立てておいてください」


 ロイスはこのまま帰ってもギリギリ今日のうちにラロックに戻れるが、本人がどうしても泊っていくというので、一泊させることにした。


 何をそんなに期待してるのだろう?


 10日後予定通りラロックの拠点に出勤? したときに旗はなかった。





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