第144話 医療とは
昨日は視察の途中から宴会に突入してしまったので、今日はその続きで病院の視察を始めた。
「この病院でサラが助かったのだな。この病院がなければサラは今頃生きていなかった。本当に感謝するよユウマ君」
「母の私からも感謝するわ。娘を助けてくれて本当にありがとう」
サラの両親から感謝を伝えられて、どう答えていいのか分からなかったが。
「本当に助けられて良かったです。でもご両親の決断があったからですよ。隣国まで送ってでも助けたいという思いがあったから、実現したんです」
「親として当然のことをしたまでだ。しかし、この病院は本当に凄いな。病院が出来てから、まだ死者は出ていないというではないか」
「そうですね、幸いにもまだそういう患者は出していません」
これには今のところ未知の病がないことも幸いしてる。これが前世のようなペストやコレラ、俺が死ぬ前に流行してたコロナなどが流行したらどうなるかは分からない。
この国は比較的気候が涼しいところだからコレラのような病気はまだないけど、もしかしたら、南の方の国ではこれからコレラに似た病気がはやるかもしれない。
俺が領都の図書館で歴史の本などで調べて知ってる範囲だと、近隣諸国でもそういった流行病があったという記録はなかったが、無いから起きないという事でもないので警戒はしておかなければいけない。
だから医者や薬師になる人には、学校や病院で衛生管理や、もしそういう事が起きた時の対処方は教えている。
細菌やウイルスについて学べば当然必要になる知識でもあるから自然に身につくのだけれど……。
「今日一日病院を見させて貰ったが、正直わしの常識が追い付かない。これ程までに違うのだな。医者というものは」
「そうですね。今までの医療に対する考え方からは大きくずれていると思います。今まで別々だった、治癒魔法、ポーション、薬が一つになっているのがこの医者という職業ですから」
本当は医者という職業を作らなくても、ちゃんと三つの分野が協力していれば、この世界の医療に問題は無かったのだが、それぞれが別々でお互いが牽制すらする状態でしたから、歪な状態だった。
多分だが、医者という職業が確立した後に、今度はそれぞれが専門的になって行くようになると思っている。
魔法はイメージこれは絶対なのだから、治癒魔法も進化できる。以前の考察では可能なのです。俺の治癒魔法とこの世界の治癒魔法には違いがある。
だったらイメージの補足が出来る知識があれば魔法は進化する。例えば今のヒールで出来ることが、具体的なイメージが加わることで、もっと広がるかもしれない。
いや、広がる。
実際に俺のヒールで出来ることが、この世界のヒールでは出来ない。この世界のハイヒールで出来るというぐらいの差がある。
俺のヒールはこの世界のヒールより魔力量は必要ですが、この世界のハイヒールほどの魔力量は必要ない。
これはポーションと改良ポーションの関係にも似ている。水を変えるだけで2割増し、魔石を加えれば5割増しですからね。
ポーションも研究すれば色んな種類のものが出来るかも知れないし、現在三段階の物が五段階とかになるかもしれない。
このように魔法もポーションもまだ、改良できる可能性がある。そうするとそれを専門に研究する人が現れる。
薬もそうです、専門に研究する人が現れるでしょう。
一度一つになってまた分かれる。この方がまっとうな進化が出来るように思います。
「ユウマ君、この病院も我が国に作ることは可能かね?」
「無理だとは言いませんが、今すぐには無理ですね。失礼な言い方ですが国の基礎が出来てからでないと無理です。お父さんも感じられたように、常識が違い過ぎるんです。ですから、先ず色んな常識を壊すことから始めないといけません」
「そうだな、焦ってもしょうがない。この国がたどった道筋を後から追いかければいいか」
その方がもっと効率よく出来る。この国は試行錯誤しながらだけど、後追いは答えが分かっているのだから、無駄がないし期間も短くて済む。
「そういえば、サラもあの手術というのを受けたんだよな。そうするとユウマ君はサラの全てを見たという事になるんだな。これは初めから責任は取って貰わんと行けなかったという事だな。がぁはは」
いやいや、それは違うでしょ。そんなこと言ったら、医者は責任取らされ放題ですよ。まぁ冗談だとは分かっているけど、中には本気でいう貴族とかはいそうだな。
これは手術の前に承諾書を取る必要があるな。 前世の承諾書にはこんな文言はないだろうが……。
薬師から医者を目指してる人の中には女性もいるからその人達に頑張ってもらうしかないな。前世でも昔は女性の治療は女性がするという国もあったからな。
女性という事で思い出したが、そろそろ本格的に看護師の育成も考えないとな。
今のところは、病院の開業に合わせて雇った世話係の人と付き添ってきた家族などでなんとか回しているが、専門的に看護を学んでいるわけではないから、医者の負担が大きい。
やばいな、これはまた仕事が増える予感。しかしそんな事してるとサラとの結婚が遠のく。
しかしこの世界の看護師って前世とは仕事内容が違うよな。実際、現状何の知識がない人でも患者の世話は出来ている。
治療前の世話と治療後の世話ぐらいしか今はやっていない。包帯を巻いたりすることも殆どない、ポーションのある世界だからね。医者の手伝いと言えば手術の時に器具を渡したり補助する事。後は病気の患者に薬を渡したり、飲ませたりするぐらい。
これだと学校を作るところまでは必要ないかな? でも医者の助手は必要なんだよな。
看護学校は必要ないけど、何かしらの教育はしないと医者の助手は出来ない。どうしたもんかな?
一人で悩んでも解決策が見つからない時は、他の人の意見を聞いてみるのが一番。
「サラさん……」
サラに医者の助手について聞いてみた。
「そうですね、それだったらやっぱり学校を作った方が良いと思いますよ」
「え! 学校? そこまでは必要ないと思うんですけど」
「その学校は……」
サラが言うには、前世のような看護師の学校ではなく、どちらかというと介護士の学校のような感じだった。ただ一つだけ手術の助手が出来ることだけが違う。
確かにやってることは介護士の内容ばかりだ。それにケガとかは直ぐに完治するけど、手術の必要がない病気の場合は看護が必要。それなら介護士で十分だ。
看護師と介護士の中間とでもいえば良いのだろうか? それなら学校の期間を短くして、前世でよくあった資格だと思えばいいか?
国家資格だけど比較的簡単に取れる資格、そういう認識ならどうだろう?
この資格を持っていたら給料が1.5倍とかだったら資格を取ろうと思う人もいるかも?
特に今は職業訓練校のような学校が出来たばかりだから、以前の弟子制度全盛の時にスキルを発現出来ずにリタイヤしたような人や、スキルが発現するような職業のじゃない人には良いかもしれない。
今更学校に通ってスキルを発現させるのが嫌な人もいるだろうから、その人達の救済にもなる。これなら年齢に関係ないからね。
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