第267話 新婚旅行?

国が隠ぺいしてくれることに成ったので、これ幸いと新婚旅行に行くことにしたんですが、ラロックでの騒ぎが落ちつかないので、一時避難という事で俺とサラ、エリーと賢者候補と見習いを連れて森の家に行くことに成った。


当然その結果、新婚旅行という名目だけのフランク達が知らない場所に連れて行くことに成ってしまった。本当の新婚旅行にも絶対行くけどね……。


飛行船などを知らないメンバーもいるから説明やら、旅行の為のパワーレベリングなどもしたから出発までに何とひと月も掛かってしまった。


勿論、王家の許可は取ってあるから問題はない。王家としても最低でも三か月ぐらいは身を隠せとも言われているからね。俺もそのつもりで引きこもる前にサイラスや孤児たちとの話し合いはすませてある。金銭的なことはグランにお願いして来たからそれも問題ない。


他のメンバーもそれぞれ仕事の引継ぎはしっかりしてきているし、在庫が必要なものは徹夜しても作ったみたい。どんだけ旅行に一緒に行きたいんだよ?


ひと月掛かったのにはもう一つ理由がある。それは飛行船をもう一機作ったからだ。だって搭乗制限があるから今の飛行船だけでは全員乗れない。大型を作るかどうか迷ったけど、早く出発したいというのもあって、一度作った事のある物の方が早く作れるし、今回は作り方を全員に教えながらだから同じタイプにした。


もう俺の秘密は転移者という事とサラだけが知っている夢という前世の記憶だけだ。それ以外は全て暴露することにした。王家にはフランク達が話した事、俺が追加で話した事で殆ど暴露したことに成っているが、本当は話していないこともある。


だから絶対秘密の二つを除いて、今回全てを暴露することによってフランク達にも丸投げをする事にしたのだ。俺がフランク達に丸投げすれば王家の思惑と違って、王家との話し合いにさえ俺は行かなくてすむように成る。


国は情報統制を自分達がしていると思うだろうが、実際は俺やフランク達がしている構図に成る訳です。多分これからは俺とサラだけが知っていることが増える。隠すという意味ではないけどね。ただ単純に二人だけで行動したり、研究することが増えるから、フランク達とタイムラグが生まれるという事です。


今回のダンジョン発見もそうだったようにね。今回は直ぐにフランク達と会う機会があったからタイムラグが少ないが、これが半年、一年と会わない期間が増えればそれは変わってくる。そこから国に伝わるのにもタイムラグが生じるから、色んなことがゆっくりになる。


まぁ時には緊急的に知らせないといけないこともあるだろうけど、そこは臨機応変にやって行けば良い。


フランク達と会う機会が減るのは寂しいが、フランクにも家族がいるし、他のメンバーにも幸せになって欲しいから、俺達との行動は出来るだけ少なくしたい。


「それじゃ出発しましょうか。先ずはフランクさん達が知らないミルという村に向かい、その後ユートピアに寄ってから、島に行きます」


今回ミルに行くので、特殊な檻も作っています。重量軽減魔法を付与した檻です。檻ですが結界の様なものなので、その中にいる物の重量も軽減される仕組みです。オックスを輸送するのに必要でしたからね。自重することを忘れたわけではないのですが、魔法のある世界なりの発展には魔法を使っても問題ないと思い作りました。


数が少なくてもマジックバックは存在するし、アイテムボックスのスキルだってあるのですから、魔法を使った物流の発展はありだと判断したからです。


魔法自体で何が出来るのか、それを此処にいるメンバー全員が理解出来れば後はどうすれば出来るように成るか努力するだけ。魔力量をあげたり、習熟度をあげたりね。


俺が持っているチートの中には絶対真似出来ない物もあるけど、それに近づけることは可能なのです。フランクの鑑定が進化しかけていることもその一例。


属性魔法が後天的に使えるように成るというのも一種の進化。それが実際に起きているのだから進化は色々と可能なのです。その可能性を示してあげることが俺の役目……。


この檻を作った時のエマの執着ぶりには参りましたけどね。エマの様には成らなかったですが、他にも鍛冶系や錬金術系の専門家であるメンバーも飛行船作りでは物凄い圧を感じました。そうなったのには俺の家を公開したことも理由の一つです。今ある魔道具より進歩した家電製品があればそうなりますよね。


この先、米の収穫が多くなって日本酒や味醂を作ろうとすれば熟成魔法も公開することに成るかもしれないけど、出来るだけ今は見せないようにしています。これだけは危険だからです。主に俺がね……。


熟成魔法は多分今の現状だと他の人が使えるように成るのに時間が掛かるから、今は誰も知らない方が良い。何処からグランやドワーフにこの事が漏れるか分かりませんからね。その為にうちの味噌や醤油、酒の保管倉庫に独自の結界を張って誰も近づけなくしたぐらいです。かなり不審がられましたが、菌が影響するからと誤魔化したらニックに睨まれましたけどね……。


色んなことを公開して専門家が増えてきているから、下手な言い訳が出来なくなりつつあってこれから大変になりそうだけど、出来るだけ知られたくないものはどうしても出来るものです……。


飛行船の操縦はフランク達も出来ますから、俺達と見習い組、賢者候補組に分かれて二機の飛行船で先ずは山脈の着陸場所を目指して出発しました。


「着陸場所に着いたらもう少し場所を広げないといけないな」


「そうですね。元は一機着陸出来れば良いという感じでしたし、簡易的なものですからね」


「こうなるともっとしっかりしたものを作る必要があるかも? 大型船を作ることも想定した方が良いかな?」


「あなた、あまり目立つのも良くないですよ。ゆっくりで良いんですからその時に考えれば良いですよ」


確かにな。当分飛行船については秘匿だろうし、使う人間が限られているからな。それにしても良く王家やカルロス、お義父さん辺りが飛行船に乗せろと言わなかったな? これだけは不思議なんだよな。


絶対そうなると思っていたから拍子抜けなぐらいだ。まぁこれが国を治める人のケジメというか、裁量、器、という事なのかもね。


俺が動乱の世の中が来るかもしれないと脅したのもあるかな。国を仕切って来た人達だ、そういう事が起きる可能性には気づくはず。だから俺達を秘匿して発展を遅らせても国が準備をする時間を作ったんだからな。


為政者とはそういうことが出来ないと無理。俺には絶対無理だと実感するよ。着陸場の事でサラに諫められるぐらいだから……。


会社の経営者でもそういう人はどこか違ったからな。こういう言い方は失礼だが、偉業のなす人は他人とは違い何かを持っているというのも事実。極平凡な俺にはそういうものは無いから無。でもそういう人がいなかったかと言えばそうでもない。周りにそれを補う人がいれば何とかやれる事もある。


俺の場合は間違いなく後者の方だね。影のフィクサーを目指している割には一人では何もできないフィクサーに成りそうだ……。


夢や希望は大きいのに俺自身が小さいよね。精神的に弱いし、優柔不断、本当にこれで世界に出て行って大丈夫だろうか? まだ誰にも言っていないけど、ユートピアを本当の国にしようという夢はあるんだよ。


ダンジョンのあるところに国が出来る。その言葉の通りならあの島で国は起こせる。それに偽ユートピアの領地もあるから出来ないことはない。国民が殆どいない国に成りそうだが、それもありかな?


島は魔境ほどではないけど魔力濃度もある程度あるから環境的には申し分ない。それに影のフィクサー=影の国王でも良いと思うんだよね。俺は世界中を飛び回るけど国の運営は別の人に任せる。


まだ世界を見ていないからどうなるかは分からないけど、ひとつの夢としては面白いと思う。


直ぐには無理でも大航海時代=大飛行船時代がくれば世界はもっと変わる。コロンブスのように新大陸発見を俺がやればまた物凄い変化が起きる可能性がある。ロマンだよね、歴史の変換点の中心に俺がいる……。


「あなたそんなこと考えていたんですね。お供しますよ何処までも」


わちゃ~~~ またやっちまった。補正が聞いているんだろうこの程度の突込みで済んでいるから、本当に本当に制約魔法早く作ろう……。










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