第268話 牧畜事業
またまたやらかした俺ですが、下手に言い訳せず、そのまま流してそれ以上話が広がらないようにして、目的地を目指した。
「到着しましたね。あなたお願いします」
もう恒例となっている俺の飛び降りに慣れ切っているメンバーは動揺もしない。ただ初めて見る見習い達や島に行ったことがないメンバーはびっくりして悲鳴を上げる者もいた。
着陸場所に降りた俺は簡易的に二機の飛行船が停泊出来るだけの広さになるように木を切って行き、着陸場所改め山の空港を作り上げた。
「いつ見てもお前の風魔法とアイテムボックスは異常だな」
「そうかな……。皆さんも出来るように成る人はいますよ多分。サラがもうそこそこ出来ますからね」
「それなんだよな。属性魔法が後天的に使えるように成るのもとんでもないことだが、俺達が知らない事は沢山あったんだな」
賢者候補たちでも知らないことは多かったが、今回殆ど暴露したし、このひと月の森での生活で自分達の可能性に自信や希望を全員が持った。その結果属性魔法の訓練を始めるものが増えた。
それ以外にも剣の練習や格闘術迄やりはじめた人もいる。今まではスキルを増やすことに挑戦していた人が殆どだが、魔境の森でのレベリングが刺激に成ったのか魔法や戦闘術に興味を持つ人が多くなった。 フランクじゃないけど戦闘狂に成りつつある。
この世界の人の多くは冒険者じゃない限り魔物と戦闘などしないし、レベル上げも殆どしなかった。それが職業スキルにも魔力量が関係している事を学べば欲が出る。
俺はこの事でもひとつ推測を立てている。それは人の進化だ。多くの人がレベル上げをして、魔力量を増やすように成るとそういう人同士の結婚が繰り返されることで人そのものが進化して基礎魔力量とでもいえば良いのかな生まれた時ばかりの子供の魔力量が今より多くなったり、魔力量の増え方が多く成ると予想している。
結局人間ってそうやって進化してきているんだよね。DNAに沢山の記憶が蓄積されたり、突然変異が起きて進化していく。他にも人間や動物は環境でも進化する。それならこの世界の人間も変わる筈。それが魔力量、魔力濃度による寿命の変化。
今までの常識が覆るたびに色んな物が進化してきた。産業もそうだし、この世界の人も進化している。スキルや魔法の変化は人の進化に成っているからね。
「それじゃ今日は此処で一泊して、明日ミルに向かいます」
「まだ時間は早いですよ、今から行っても問題ないと思いますけど」
「今日はこの後ガルスを捕獲してこようと思うんです。明日ミルに持って行きたいので」
以前ミルを牧畜の盛んな村にすることを村長のルイーザと約束したからその為の家畜化できる魔物は多くしたい。ボア肉よりオーク肉の方が現状は多く普及しているが、今後ボアもティムして家畜化できるかもしれない。イノシシから豚が生まれたように品種改良が出来るかも知れない。
ここはマッドサイエンティストの出番だけど、ボアの魔石とオークの魔石を入れ替えたり、合成してボアに埋め込めば品種改良も可能じゃないかと思っている。ゴブリンがホブゴブリンに進化したんだから可能性は十分にある。
ここでも雌雄のない魔物が逆にヒントに成っている。交尾しなくても魔物が増えるなら増える方法は俗にいう魔力だまりから生まれるとかに成りそうだが、それをオックスが否定してくれている。雌雄が無いのに子供を産むからね。見方を変えれば全て雌とも言える。
そんな中でもガルスやエミュは雌雄があるのに、無精卵を生むものもいる。
ここまでの研究や推測で牧畜には錬金術、医学、魔物学の知識が必要だと分かる。勿論やるのは専門家だが、牧畜業者もその知識だけは持っていないと、品種改良も出来ないし、牧畜が発展しない。
ただ誰かが作った物や研究した成果だけを受け取るだけでは進化、発展はない。それが今までのこの世界だ。
それが学校ができ基礎知識が上がり、その後専門知識も追加されることで色んなことが変化する。言うなれば賢者候補たちに小学校の勉強を教えたように国語、算数、理科、社会の代わりに国語、算数、錬金学、魔物学、生物(植物)学、社会の基礎知識を身につけさせる。
この世界独自の基礎を全員が学ぶ。そしてこの世界の体育には魔物討伐が含まれる。正しく教育が世界を変える……。まぁ当分先の話だけどね。
今はまだその基礎を作っている段階だけど、成果を見せないとその基礎さえ学ぼうとしないでしょうから、実績を先に作っている。
今回牧畜業の講義をミルでしたら、賢者候補や見習いは、俺がやったホブゴブリンの進化が何のための研究か理解出来るはず。
まぁ本音は半分興味本位の遊びでやった事なんだが、それでもその結果は財産に成り、家畜の品種改良に役立つ可能性が大いにある。
魔石に属性があるという成果もこの品種改良に影響する可能性がある。例えばガルスにホーンラビットの魔石を移植したらどうなるのか? お互いの魔石の属性が違えば何か変わる筈。
特殊な方法ばかりではなく、普通に餌の配合を変えるとかの情報も教えるけどね。
「どうなっているんでしょう? この前かなりの量捕獲したはずですが、完全に元通りとまでは行っていませんが、かなり回復していますね。時間的には二か月ぐらいでしょか?」
「物凄い繁殖力というか増殖力。でもこれが普通ではないでしょうね。これが普通なら増えすぎてしまいますから。それからすると数を増やすのは割と簡単に出来そうです」
この増え方なら食肉としてもつかえそうです。玉子だけじゃなく。でも食肉ダンジョンがあるから如何したものか……。
その日の夜は牧畜業を始めるにあたって、何が必要でどんなことを教えたら良いかなどを話し合った。
前回は俺とサラ、エリーだけだったけど、今回は各分野のプロが集まっている。だからただ牧畜の事を教えるのではなく、各分野の事を少人数に絞って基礎の基礎を教えるのも良いと思う。それによって勉学の必要性に気づいて牧畜で稼いだお金で将来ラロックの学校に人を送れるようになったら良いな。
ミルもユートピアもどちらかというと国から半分見捨てられている状態だ。ユートピアを国にしてしまって、第二のラロックを作ることも出来るから、ユートピアに学校も作れるからユートピアに留学という方法もあるな。
ビーツ王国にはエスペランス王国が、ミルというかフリージア王国にはユートピアが援助する形が取れれば、どちらかというと敵対的な神聖国、共和国、帝国に対抗できそうだ。
ミルも乗っ取るという方法もあるんだよな。物騒なやり方だけど方法の選択肢の一つだ。まぁ急ぐことでもないし、国が絡むから簡単でもないしね。
翌日、朝早く出発して昼頃にミルに到着した。村の外からの見た目的には以前と変わらない。ただ中に入る段階から異様に歓迎されている。門番的な人が以前はいなかったのだが今はちゃんといるし、村への出入りをちゃんと制限しているみたいだ。
どうしてこうなった? 俺達が訪問したのが原因なのかな?
今回の訪問は人数も多いし、村の外においては来ているけどオックスもガルスもいる。この村はラロックのような木の壁は無いからどこからでも外の様子が見れるからどういう人たちが来たのか直ぐに村人達は知ることが出来る。
「こんにちはルイーザさんいますか?」
家の中から返事がするかと思っていたら、家の横から返事がしてルイーザさんが姿を現した。
「おう,あんたかい。今度はやけに大人数だね」
「えぇ今回は以前お話ししていたオックスなども連れて来ていますし、この村の役に立つ人を多く連れてきましたからね」
「役に立つ?」
「そうです。全員何かしらの職業スキルを持っている人たちです。それも親方クラスばかりですよ」
この村ではまだスキルの学校の事さえ知られていなかったからね。はっきり言って本当に見捨てられている村です。物だけではなく情報すら殆ど入ってこない。逆にこの村の情報も出て行きませんけどね。そうじゃなきゃエミュの玉子に目を付ける人もいたかもしれない。行商すら殆ど来ないから自分達で買い出しに行っていたぐらいですから……。
「そんな人たちを連れて来てどうするつもりだい?」
「勿論、技術の伝授をする為ですよ。そうすれば買い出しに行かなくてもすむようになるでしょ」
「そんな簡単にはいかんじゃろ。技術の伝授なんか」
「それは確かに直ぐには無理ですが、基礎は教えられますからそれを続ければスキルも発現しますよ。ここにいる人達はそういう事のプロですから」
「プロって何だい?」
「そうですね例えるなら。達人でしょうか」
ルイーザの不信感丸出しの顔を無視してそこから怒涛の一週間が始まった……。
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