第247話 フリージア王国
出発前から気が重い事に成ったが、兎に角先ずはフリージア王国に行って、そこの視察を済ませてから、次の行動を考えることにして出発した。
今回は二度目という事もあり、順調に飛行船は山脈伝いに飛行して、トンネルのある山の頂上に作っておいた、着陸基地に到着。そこからは身体強化で爆走して、フリージア王国の西部の都市? を目指した。
ですが、爆走しているにも係わらず、何時まで経っても村一つ見つからない……。
どういう事だろう? 一番考えられるのはフリージア王国では南西部は手付かずの状態だという事です。魔境の森のようにレベルの高い魔物がいるようでもないのに、どうして開拓しないんだろう?
山には鉱物資源だって眠っているかもしれないのに……。
「ユウマさんが今考えてるのは、何故ここが開拓されていないかでしょ」
「はい、その通りです。だってどう考えても、もったいないですよ」
「その放置してる理由は、私が貴族の学校で習った事ですが、この国は農業が中心で正直貧乏な国で人口も多くないから、開発に回せる予算も人員もないそうです」
確かにこの国は自給自足は出来ているけど、外貨を稼ぐ方法が殆どない。砂糖があるにはあるが、自国で消費する分ぐらいしか作っていない。輸出しようとしても共和国が間に入るので、ビーツ王国の価格に勝てない。
唯一、帝国には普通に売れそうだが、帝国の南部でも砂糖を少しは製造してるので、量が売れないのです。エスペランス王国の辺境のラロックと同じように帝国でも東や北東の辺境では輸送コストのせいもあり殆ど一般人には流通していない。だから余計に量が輸出されない。
最近は改良馬車のお陰で少しは増えてきましたが、それでもまだまだです。だから沢山作っても意味がないので、開拓もしないのです。別に腐る物じゃないからと思うでしょうが、国に金が無いから国が買い上げることも出来ないので、売れる分だけ生産するという、経済の悪循環にハマっている。
まぁこんな感じが、サラと年長者のエリーから道すがら聞いたことを俺なりに推測と考察した内容。
「お! 漸く人が住んでいそうな場所が見えてきましたね」
「でもユウマさん、あれはどう見ても都市ではなく、村ですよ」
それにしてもここまで結構な距離を移動したのに初めての集落が村か……。
ラロックも辺境だったけど、見た目だけだけど村の規模では無かったからな。今じゃ正真正銘の町に成っているしな。
「どうしましょうか? このままこの村は無視してもう少し大きな町を目指しますか?」
「それでも良いですけど、この先に行っても大して変わらないような気がしますよ。それにユートピアとの交易を考えれば、ここが遠くても最適ではないですか?」
そうなんだよな。ここでも遠いから、これより先となるともっと遠くなる。これはかなりの誤算だ。いくらなんでもこれ程遠くにしか村がないとは思わなかった。
「サラ、これはちょっと計画変更しましょう。このままでは視察どころではありません」
「どう変更するんです?」
「一度引き返して、山から続く森の方に道を作ってから再度視察と交渉をしに来ましょう」
先ずはユートピアと此処が交易できる準備をしてからではないと、相手も聞く耳を持たないでしょう。それにしてもこの村は山からも海からも離れていますが、いったいどうやって生活しているんでしょうね?
手付かずの平原? うん~~~ん、実にもったいない。ここでは暑すぎてオックスの飼育は無理なんでしょうかね? それが出来れば、一大乳製品の輸出国になりそうなんだが……。
それに前世のオーストラリアのように羊の魔物オビスも飼育できれば、魔法陣用に羊皮紙も沢山生産出来る。羊皮紙ギルドを壊滅に追い込んだ俺の言う事では無いかもしれないけどね。
オックスも本来は肉牛としても飼育できるが、エスペランス王国では数的に乳牛としてしか利用していないが、暑さに問題がないなら、ここでは正直増やそうと思えばいくらでも出来るから、肉牛と乳牛の両方で利用できる。
これにガルスも加わればとんでもない食料生産国になるな。やはりここは慎重に準備して、話を一気に進められるようにしておこう。
「あ! 閃いたかも!」
「また唐突に何です?」
「いや、その~~……」
「はっきり言いなさい!」
いや、これは言っても良い事なんだろうか? 思わず閃いたことが画期的な成功をもたらすかもと思って口に出てしまったんだよな。
「実はここでオックスの飼育が出来ないかと思ったんです。ですが気候的に暑すぎるのが問題だと思ったのですが、例の魔石の属性変化をオックスに施せば、ここでも飼育が可能になるのではないかと思ったんですよ」
魔物の進化には魔石が関係していたから、それの応用で魔物の品種改良というか、体質改善に魔石が使えないかと思ったわけです。オックスは特に暑さを嫌いますから、体内の魔石を水属性の魔石にしたら、次に生まれてくるオックスの体質が変わって暑さに強いオックスが生まれないかと思ったのです。
「それって、強制的に変えるという事ですよね。それも手術をして……。それをフランクさんが知ったら……」
「そう、そこなんですよ。ホブゴブリンの件で相当迷惑をかけていますから、どうしたものかと思いまして」
何故か、この世界で品種改良を考えると、一種のマッドサイエンティストのようなことをしないといけない。アクイラの魔力問題の解決方法も結局は魔石の交換という方向の考えしか浮かばなかった。
俺が本当にマッドサイエンティストに成ったわけではなく、この世界ではこの方法が品種改良の方法なのではないのかな?
本来の品種改良はそれぞれの特性を掛け合わせて出来た中で、特異な変化をしたものを育て増やしていく方法。しかし、この大陸にはオックス以外の牛系の魔物はいないから、根本的に必要な掛け合わせる相手がいないのだ。
そう言えば、この世界に魔物の変異種はいないな。ラノベとかだと変異種何て珍しくもないんだが……。まぁその変異種が生まれる原因に触れてる小説も殆どなかったけど……。
この世界の変異種と言えるのは、魔力の濃さによる同一の魔物のレベル差がそうなのかもしれない?
「折角ここまで来ましたが、一度引き返しましょう」
「ユウマさん、それは良いんですが、それでも一度この村を見るだけはしといた方が良くないですか? 準備をするにもこの村の状況が分からないとまた計画変更することになりますよ」
そりゃそうだ。この世界に来てからの俺の悪い癖だ。前世はもっと慎重だったし、ここに来た当初はもっと用心深かったのに、今では心の声まで駄々洩れに成る程警戒心が薄れている。
『成功は準備の段階で決まっている』 昔何かの本で読んだことがある。
最近の俺に足りないのはこれだろうな。結構行き当たりばったりの所が多い。これからはこの大陸の国全てを相手にするように成るのだから、計画はもっと綿密に調査してから立てるようにしよう。
今回もその為の視察のつもりがこのままではまた中途半端な計画に成ってしまう。不可抗力とは言え、適当な行動が、ユートピアを作ってしまったからな……。
「サラの言う事の方が正しいですね。この村の状況は知っておくべきだね」
こういうところでは変に慎重なんだよね俺って……。もっと気軽に村や町に出入りできるのに気にし過ぎて躊躇してしまう。
前回俺は気にし過ぎていたけど、この世界の通信状況だと密入国何てバレないんだよね。精々身分証の確認位で記録も取っていないから、身分証を持っていれば何の問題もない。
良く考えれば分かりそうなもんなんだよ。実際俺がラロックに始めて行った時には身分証すら持っていなかったんだから。密入国ならぬ、密入世界だってバレなかったんだから、全く気にする必要はなかった。
今回俺は商業ギルドの身分証を持っているし、名誉伯爵の証明の紋章付きのメダルも持っているから問題ない。サラとエリーも貴族関係の身分証を持っているから入村自体には問題ないだろう。
それじゃ、フリージア王国の辺境の村の様子を見に行きましょうか!
それにしても俺って辺境に余程縁があるのかね? これで三つ目の辺境の村だよ……。
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