第171話 異世界あるある 何度目?

 醤油と味噌のお披露目が済んだ翌日、案の定凄い形相でケインがお仕掛けてきた。


「ユウマ~~ お前という奴はそんなに薄情だったのか。俺の事が嫌いか? 俺をいじめて楽しいか?」


「ちょ! ちょっと待って、どうしてそんな事言うの? 黙っていたのは悪いと思うけど、別にケインさんにだけ隠していた訳ではないですよ」


「何で俺を試食会に呼ばなかった!」


 そっちか~~ それは仕方がないんだよな。量的に少なかったし、ケインは一応独立してるから、呼ばなかっただけなんだよな。


「量的に少なかったし……」


「魚介類が少なかったというのは聞いたからまだ良いが、調味料は違うだろう。俺に一番に教えるのが道理だろう」


 いや、いや、道理って……。確かに今まではスライムパウダー、ウイスキーなどの時は一番に協力して貰ったから、今回もそうしたほうが良かったとは思うけど、醤油と味噌のお披露目は魚介類のついでだったから、しょうがないじゃない。


「一番に教えるつもりだったけど、今回は魚介類のついでだったから、許してよ」


「フランクから大体の事は聞いたから、今回はこれぐらいにしとくが、次は無いからな。今度あったらお前とは縁を切る」


 そこまで言うか……。恐らくは冗談だろうが、それぐらい失望させたんだろうからこれからは気を付けよう。料理バカにしたのは俺にも責任があるからな……。


「それで、その醤油と味噌という物はどんなものだ? 俺にも味見させろ」


「そうだねそれじゃ、ちょっと冷凍庫に行ってくるからここで待っていて」


 この際だから、ケインに醤油と味噌を使った料理を伝授して、研究、改良をしてもらおう。何時までも俺が関わっていたくないしね。飯テロも人任せにした方が楽だからな。


 米が無いから和食も中途半端だが、しょうがないか……。


 あ! ソースはどうしよう? 教えないとまた怒られるかな? でもこれはフランクにも言ってないからな。


 ウスターソースは野菜や果実などのジュース、ピュレなどに食塩、砂糖、酢、香辛料を加えて調整、熟成させた液体調味料。他にも色んなものが入れられていて、前世でもそれぞれの国で味が違っていたからな。


 日本だと醤油や魚醤も使われていたから、日本風のソースも作れるけどどうしよう?


 そうだフランクには怒られるかもしれないけど、この際だからケインのご機嫌を取るという事で、ソースをケインに教えてやろう。


 このように二人きりで会話をしてるようだけど、実は傍にサラがいる。スーザンとフランクの要請でサラは俺の傍から離れない。


「サラ、これから料理を作るけど、その時にソースもお披露目するけど良いかな?」


 サラには森の俺の家で全て見せているし、料理も普通に食べさせているから、お披露目していない調味料も当然知っている。何も言わないけど、熟成したウイスキーやブランデーも一緒に飲んでいる。


 未知の物、俺の記憶を夢として本にしてる物を使って勉強してるからなのか、死にかけたことで肝が据わっているのか分からんが、何事にも動じないんだよねサラは……。


 俺が転移者だという事以外は全てサラには話しているからな。フランク達には未公開の物まで全て知っている。ウイスキーやブランデーの熟成方法も教えているけど何も言わない。


 魔法はイメージという事を一番理解してるからなのかもしれない。だからこそ風魔法の修得に励んでいる。


「それなら私がフランクさんに報告してきますから、その間に料理を作ってください。少しは怒られるかもしれませんが、ついでにこの際ソースやワインビネガーもお披露目しましょう」


「そうだね。この際だから今ある調味料は全てお披露目してしまおうか。その後の事は丸投げという事にしましょう」


「それで良いんじゃないですか、ユウマさんらしいです……」


 何故に俺が丸投げ好きなのを知っている? まぁ俺の事を理解してくれているんだから良しとするか、気にしてもしょうがない。


 それから冷凍庫から魚や昨日の試食会では使わなかったタコなどを持ってきて色んな料理を作った。勿論、ケインに作り方を見せながら。


 ちなみにタコはビーツ王国ではタシという。足が多いからタシなのかな? いや、それだと日本語だよな。偶々だよね……。


 ウニはハリ、ナマコはヌメ、アナゴはウミヘビ、イカはなぜかイカ…… 分からん?


 飯テロも今回で一気に進めることにして、イカ墨があるから、パスタも作ってやった。勿論、うどんもね。海藻があるから魔法で乾燥させて、昆布だしと森で採ったキノコ出汁で醤油仕立てのうどんスープを作り、出汁、西洋でいう所のスープストックの概念も教えてやった。


 兎に角、俺の知っている限りの料理を出来るだけ作ってみた。当然……、 フランクに……。


「ユ・ウ・マ、お前という奴はどうしていつもそうなんだ」


 今回も怒られたけど、そこは料理を食べさせたら、機嫌は直るよね。極上の料理だからね、この世界では。


「ユウマ、このパスタとうどんは販売しても良いよな?」


「売っても良いけど、どちらかというと作り方を売った方が良いと思うよ」


「作り方を売る? 特許のようにか?」


「そう、生の物なんて輸送に苦労するし、乾燥させるという方法もあるけど、それは別に乾燥方法として売った方が良いと思うよ」


「そうか食堂経営者なら生でも良いが、一般家庭に売るには乾燥させた方が良いな」


「その通り、でも食堂経営者でも日持ちがするから乾燥したものを購入するかもしれないよ。だから別々に登録した方が良いと思う」


 結果的には一つの特許になるかもしれないけど、乾燥させるという特許は別に登録した方が、後々有利になる。


 だって乾燥させるという事自体に特許を取ってしまえば、極端な言い方をすればどんなものでも乾燥させることに特許が絡んでくる。


 物凄く卑怯な方法だけど、これも特許で世界を支配する一つの方法。自然乾燥ではない魔法による方法だけどね。魔法まで特許を取ってしまおうという物。いづれは魔法も登録制にしようと思っているからなんだよね。


 この世界では魔法が前世の科学や物理と同じだから、魔法も特許が必要になる。そうしないと魔法の開発、研究が何時かは止まってしまう。


 新しいスキルだって将来的に取得方法が確立されればそれ自体が特許です。現状学校などで教えている方法は既存のスキルだから問題ないけど、これから世界が進歩したら新しいスキルが生まれるかも知れない。そうなった時にスキルや魔法が特許として登録されないと、これらの研究も止まってしまう。


 それならスキルの発現方法を特許登録して海外に出してしまえば、学校に留学生などを迎えなくても良いだろうと思うでしょうが、そこは徐々にやらないとこの国が有利にならない。


 この国の学校や病院でスキルや医師の資格を取るという事に意味がある。いずれは全ての国で学校や病院が出来るでしょうが、発祥がこの国で最先端を行っているという事に大きな意味が将来的に出てくる。


 極端な言い方をすれば、人に平等が無いように国にも平等はない。


「うめな~~ ユウマこの醤油と味噌、ソースは料理の革命だぞ。塩や香草しか味付けが無かった時からしたら物凄い進化だ」


「そうだ、醤油と味噌と一緒にソースも作らないとな。また人集めから始めないといけないないし、場所の確保も必要だ」


 多分、これから先はグランの仕事だけど、今回はジーンにも活躍して貰わないといけないかな?


 これからは俺はどんな事でも殆どタッチしないようにすると決めている。建物も自分たちで作って貰うし、生産も全て自分たちで計画からして貰う。


 賢者候補も見習いもそこそこ育ってきたし、学校の変革も粗方出来たから、これからは俺は提案だけして、実行は自分たちにやって貰う。


 グラン達だけに限らず、国にもね。


 勿論、助言はするし、手伝いはするけど……。






















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