第218話 無人島

「島ですね」


「島だね」


「それなりに大きな島ですね」


「何皆さん何時までも呆けているんです。着陸して調査しますよ。その前に全員それぞれで魔力感知をしてみてください。一人づつ交代でですよ」


 同時に多くの人が魔力感知をしたら干渉しあってまともな感知が出来ないので、一人づつ練習も兼ねてやって貰う。


 俺は既にやって確認しているが、これは物凄く良い勉強になりそうだから、敢えて皆には何も伝えないでやらせている。


 実はこの島には今まで感知した事のない魔物の反応が結構ある。大型の魔物はいないようだが、レベル的にはそれなりに高そうだ。それでも魔境の入り口と俺の家の中間ぐらいの所の魔物と同レベルが殆ど。だが一部俺の家よりも深部の魔物と同レベルの物もいるようだ。


 魔素的にはそんなに濃いとは思わないから、どうしてこういう生態系になっているのか興味がある。もしかしてガラパゴス的な島なんだろうか?


 独自進化した魔物が居たりして? ガラパゴス的なら逆に進化してない魔物がいるかも?


「ずっと飛行船の移動でしたから、この島で少し休憩を兼ねて陸に降りましょう」


「ちょっと待て。ユウマいくら俺が未熟でもこの島がおかしい事は分かったぞ。それを皆に教えないで着陸しようとするのは面白がっているだろう」


 バレたか~~~ しょうがないそれなら説明してからにするか。それだけ皆が成長してるという事なんだから喜ばしい事だな。


「フランクさんが言うように、この島の魔物はちょっと異常みたいです。今までに感知した事のない魔物もいるようですし、殆どが魔境の魔物クラスですから、油断だけはしないでください」


 何時ものように俺が飛び降りて、係留ロープを引くのですが、やっぱり今回もその行動を見たことない錬金術師たちには驚かれました。


 この係留方法もどうにかしないと、見た目的に原始的すぎるよな……。


「取り敢えず、ここからは二手に分かれて、先ずは海岸沿いを調査しましょう。決して森の中には入らないようにしてください。森の調査は全員でやりますから。組み分けはフランクさん、ロイス、ミランダさんの三人と俺、サラ、エマさん、ローズさんの組み分けで行きます」


「森に入らないで採取できるものは気になったら持って帰っても良いんだよな?」


「いえ、それも止めてください。気になったものは場所と形状もメモして来てください。触ったり、臭いだけでも有害なものありますから、出来るだけ遠目からの観察に留めてください」


「まぁ、フランクさんが鑑定を持っていますから厳密にしろとは言いませんが、出来るだけ注意が必要なので、それぐらいの気構えで調査してください」


 フランクの鑑定もかなり習熟度は高いが、俺のEXとはまだまだ開きがあるから用心に越したことはない。


「それから、海岸を歩く時も森と波打ち際の中間を通って下さいね。中には海中から襲ってくる魔物がいるかも知れませんから」


「それじゃ、取りあえず日が沈む前にここに戻ってくる予定で良いな」


「そうですね。上空から見た感じだと、途中で海岸も切れていましたから、全周の調査は無理でしょうから、その辺の判断は臨機応変に任せます」


 そこから二手に分かれて調査を開始したが、俺の感覚からすると前世の南の島という感じだった。海岸沿いにはヤシの木のようなものが沢山あるし、海岸から見える範囲だけでも森の中にはバナナの様な物も発見できた。


 他にも俺の鑑定が届く範囲だけでも食用になりそうな果物がいくつもあり、薬草に成る物もあった。この植生だともしかしたらスパイス系の植物も期待できそうだし、島の中央は少し山に成っていたから、コーヒーも期待できそう。


 カカオなんて採れたら、チョコレートも作れる。そう思った時少し悪寒が走った事は気にしないことにした。


「そろそろ戻る頃には日が落ちそうですから、今日の調査はここまでにして戻りましょう」


「ユウマさん、魔力感知に小型の魔物がちょこちょこ反応するんですが、私の魔法の練習台にしても良いですか」


「俺も気づいていたけど警戒して出てこなかったので無視していたけど、そういう事なら良いですよ。数も殆どが単体でしたからね。コントロールを重視して回りを破壊しないようにしてくださいね」


 サラが風魔法のウインドカッターをマスターしてから、打ちたくてうずうずしてるのは知っていましたから、良い機会ですから存分に試してもらいましょう。それを見るエマやローズの反応も気に成りますから。


「サラ様凄い! もう何匹目ですか? 確実に首をめがけて魔法を打っているから、一撃必殺ですね。それも威力調節までされているんでしょ」


「ひたすら練習しましたからね。今では最大威力ならこの辺の木ぐらいは切り倒せます」


 そんな感じでサラの独壇場の魔物討伐を見ながら一時拠点に戻て来て少ししたら、フランク達も何かをぶら下げて戻って来た。


「お疲れ様そちらはどうでした?」


「そうだな。まぁ珍しい植物は結構あったが、俺の鑑定で分かるものは少なかった」


 フランクの鑑定もかなり習熟度は高いはずなのに、それでも判別できなかったのか? なぜだろう……。


「名前や食用や薬用と言うのは分かるんだが、見た目的に触りたくないようなものが多かったから、躊躇してな。持ち帰るのは止めたんだ。食用や薬用でも直接触ってはいけない物があると最近ニックから教えてもらったばかりだったからな」


 フランクが本当に成長してるよ。以前だったら、見知らぬものを見つけたら、好奇心の方が先行してそうい事は考えなかっただろうからな。


「それにしてもそこで解体してる魔物はどうしたんだ? 森には入るなって言っていたのに」


「これはサラが魔法で森の外から仕留めた魔物だよ。コモドという名前の魔物」


 前世の正しくコモドドラゴンそっくりの魔物でした。まぁオオトカゲですね。


 鑑定にも食用で美味と出ていたし、皮は水に耐性があって小物入れや財布などに向いていると鑑定に出ていたので、解体して今日の夕食にすることにした。


 俺のインベントリにはもう調理済みの物が沢山入っているが、こういう場所だからBBQも良いだろうと思って準備していた。


「フランクさん、手に持ってきたのはパルマですね。それは水代わりに中の水を飲みましょう」


 この世界のパルマは前世のヤシの実の事。落ちてる物を持ってきたようには見えないけど、あの三人ではあの高さの実は採れないだろう? どうやったのかな?


「なんだユウマはその顔は? これか? お前の事だからどうやって採ったのか気になってるんだろう。簡単なことだちょっと一本切り倒しただけだ」


 はぁ~~ 実を採るために木を切った……。もう駄目だ、この人本当に脳筋になって来ている。これはどこかで修正しないとこの先が思いやられる……。


 流石にフランクが堂々とそれを言った時にはロイスもミランダも目を俺から反らした。まぁこの人達は常識がまだ残っているという事なんだろう。それだけは救いだな。


 コモドの解体は必要な分だけで良いという事にして、2体も必要ないと思ったがサラが面白がってウキウキしながらやってしまった。


 残りのコモドは俺のインベントリに入れて保管することにして、早速BBQの準備に取り掛かった。今回は醤油もあるから、本格的なたれではないが、ローム糖と醤油でたれを作って焼き鳥風にしてみた。


 鑑定に美味と出ていた通り、正直前世の鶏肉よりさっぱりしてるのに臭みもなくジューシーで非常に美味しかった。レベルが高いのも影響はしているだろうが、養殖できるなら、やってみたい魔物だ。


 それには習性なども調べないといけないから、直ぐには無理だな。


 その日はBBQで盛り上がって、次の日から本格的な島の調査をすることにして、飛行船で女性陣が就寝して、俺達男は海岸にテントを張って野営した。


 久しぶりの野営は前世のキャンプを思い出して、夜遅くまで三人で持ち込んだウイスキーを片手に俺の結婚をつまみにされて飲み明かした。


 ロイスの野郎覚えてろよ。今度はお前がつまみに成る番だ。俺が気づいていないと思っていると、後悔するぞ……。

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