第128話 7人の賢者+ひとり

 病院も学校もその他も全て順調に進んでいる。そう進んではいるのだが、その全てに俺だけは含まれていない。


 なぜか? それは俺の賢者計画だけが停滞しているからです。


 7人の賢者候補は当然頑張ってくれている。以前に比べれば拠点や病院などに関わる時間も減ってきているので、俺からの課題に取り組む時間も増えている。それなのに結果が出ない。


 焦っても良い事は無いと分かっているのですが、このままでは俺がいつまで経っても引き籠れないのだ。


 俺の引きこもり計画の一部が賢者計画なんだよ。賢者=俺の分身が表舞台に立ってくれる事で、俺は自由に動けるように成り、陰から世界を動かすという、俺の超我儘が成り立つのだ。


 動かすといっても、産業や魔法だけどね。文明の進化を陰から操る、陰のフィクサー。(カッコ良く言ってみた)


 自由になったら、飛行船で魔境の果ても見てみたい。世界を周って世界中のダンジョンに入って、あわよくば制覇してみたい。他にもこの大陸以外に別の大陸があるのかも調査したい。あげれば切りがない。


 それにもう一つ理由がある、例の寿命の件だ。


 まだ調査を始めたばかりだから、これといって成果は出ていないが、魔力量や魔力の濃さが人間に影響がある可能性はかなり高いと思っている。


 周りがどんどん歳をとるのに、俺だけがいつまでも若いなんて、あり得ませんから。それこそ人外認定まっしぐらです。それにこの事は俺の人生にも大きく影響する。


 そう嫁さんです。 出会いがある無しに関わらず、これは大問題なんですよ。


 寿命の違い。その影響が出るのが、結婚。俺は結婚したいのだ~~


 賢者計画は2~3年とか言っていた自分が恥ずかしい。まだ1年も経っていないのにこの焦り振り。


 良く考えるとこの世界に転移してから、もう4年目? なんだよね。


 あまりにバタバタしてたから正確に覚えていないんだよね。確か年越しが3回あったような? マジで俺大丈夫だろうか?


 学校が今4期生だから3年は確実に経っている。俺が転移したのが春?秋?


 翌年に学校を作ったから、5年目? 俺の誕生日を転移した日にしたから、俺は22歳? う~~ん、よう分からん。


 そうするとフランクは35歳? 出会った時が30歳だったのは何故かよく覚えている。人の事は覚えてるのに……


 この5年間でやったことを考えて、賢者計画とはをもう一度整理してみた。


 学校はこの世界に関することが多い、主にスキルに関してだから。病院も大して変わらない。では何が賢者計画に足りないのか?


 小学生の理科、中学生の理科、高校の生物、科学、物理、俺の持っている知識の大半はこれなんだよ。勿論、これ以上の物もあるけど、基本はこれ。


(やっぱりこれだよ、これを順番に教えていない)


「サラさん、ずっとそこにいたんですか?」


「はい、ユウマ先生が何か考え事をされてる様でしたので」


 いや~いつもの思考の渦に入っていたのか、これはどうにかしないといけませんね。


 しかしサラさんは良く声も掛けずに待っていたな。この人の性格なんだろうか?


 サラさんはあれから、あれとは病室での一件のこと。俺が無意識に口走った。


 「それなら暫く私の補佐でもしてみますか?」の一言から。


 俺の助手というか秘書というか、そんな感じで俺の傍にいる。 どんな感じだよと突っ込みが入りそうだが。


 そうだ丁度サラさんという、他の賢者候補とは違うスキル無しの人がいるんだから、一からはじめてみよう。この人に教えることを前提にすれば、教育の仕方が確立するかもしれない。


 それが将来、賢者から世界に広まって行けば文明がこの世界の人によって進む手助けになる。


「サラさん、何を学ぶかをまだ決めていないと思うんですが、取りあえず俺の授業を受けてみますか?」


「ユウマ先生の授業ですか? どんな授業でしょう?」


「説明が難しいのですが、考え方の基本を作る授業ですかね?」


 小学校の理科で作る考え方の基本、観察・実験、栽培や飼育といった活動をして、自然に親しみながら、問題を見出す→予想・仮説を立てる→観察・実験を行なう→結果を整理し結論を得るという、科学的な見方・考え方を身に着ける。


 これを賢者候補とサラさんに教育する。今まで虫食いのように教えてきたから、結果が出ないのではと思ったから、初心に帰って一から始めてみる。


 ということで、賢者候補7人とサラさんで授業開始です。


「ユウマ、突然どうしたんだよ?」


「ユウマさん何かウキウキしてません?」


「ユウマさん病院はどうするんです?」


 それぞれ色々言っているが、全部無視して


「それでは皆さん俺について来て下さい。学校の畑に行きます」


 教師でもなかった、俺に出来る事は自分が学んだやり方をトレースすることだけなので、小学生の理科で初めにやった朝顔の観察に似た事をやる。


 だけど、この人達は立派な成人なので理解度が違いますから、どんどん進めて行きますよ。


 学校の畑はスライム核の肥料を使っているので成長が早い。観察記録もどんどん進む、流石にこの世界では動物はいないので飼育の勉強は出来ません。


 では俺はどうしたか? やっちゃいました。ついに禁断の魔法、ティムのお披露目です。


 以前から色々暇を見つけては実験を繰り返していたんですが、ついに隷属魔法に直ぐには繋がらない、魔法の開発に成功したのです。


 はじめはティム=隷属、支配だったのですが、魔法陣の魔法文字の研究が進み、ティム魔法に知能が高いと効果が無いように出来たのです。 えっへん!


 ただこれも絶対ではないのです。何時かは隷属の魔法もできるでしょう。


 魔法はイメージこれは絶対の原則ですから。勿論隷属の魔法には相当な魔力が必要です。それだけ強力ですから。


 だから開発しても使える人はそんなに多くないと思います。恐らくですがレベル40~50ぐらいの魔力量が必要です。魔力量には個人差がありますから、これ位幅があります。


 このレベルの人が多くなるのはどう考えても100年以上下手すると500年は掛かるでしょう。


 身体強化などの魔法は開発されていますし、その他の魔法も進化するでしょう。それでも直ぐには無理です。現在までの人類最高がレベル50ですからね。史上たった一人です。


 俺のチートでも今のレベルになるのに5年掛かっています。経験値100倍の俺でもです。単純計算なら普通の人は500年掛かるという事、それも魔境の森の高レベルの魔物を倒し続けてです。


 ただ懸念があるとすれば、長命種のエルフがこの魔法を開発したら使える人が増えて、エルフが世界を支配する可能性はあります。今現在でもレベルが高いですから。


 まぁ俺もそのまま放置するつもりはありませんよ。 隷属できる魔法が作れるならその反対も作れるはずですから研究はします。


 難しい話はおいといて、オックス(牛の魔物)の飼育を始めました。


まぁその前にティム魔法の講義はしましたし、オックスの捕獲も大変でした。

 

 飼育=牧場です。 教育というには規模が大きいですが、これもミルクやチーズ、バターの為です。これは個人の欲望がそうさせました。 


 ミルク=乳製品が出来るんですよ。我慢できるわけがない。


 誰がなんと言おうと、農耕牛だけなんて人類に対する冒涜です。


 鶏系の魔物は未だ見つからず。この国にはいないのかな?










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