第40話 錬金術の神髄

 ポーションの事で大騒ぎになったが、何とか昨日の説明会は全て終わり。今日からは本格的に錬金術師たちに色々覚えてもらう。


 俺が本で勉強した錬金術の内容より、俺のやり方や出来る物はこの世界の常識を超えている。


 何故か? 科学の知識があるからだ。普通は錬金術で作らない物でも、少数で良ければ、材料さえあれば錬金術で作れる。


 例えば、鉄鉱石から純鉄のインゴットが作れるし、複数の素材からこの世界にないガラスが作れる。


 錬金術も魔法なのだ。材料とイメージで作れるのだ。ガラスの材料にこの形と言うイメージで、色々な形のガラス器具が出来る。


 簡単に言うと、抽出、分離、合成の様な知識があれば、この世界の物より上質な物が出来る可能性が大きいという事。


 錬金術って本当に便利、科学では色々反応させたりして作るものが、材料さえ有れば必要な物が錬金術で作れる。


 前世にも錬金術(科学)は存在してたけど、この世界の錬金術は魔法だから仕組みや原料が解っていれば、イメージで工程をすっとばして目的のものが器具がなくても作れる物が多い。作れない物の多くは液体の物、そこは普通に器具を使って作る。


 科学と魔法錬金術のコラボで色んなものが作れる。これぞこの世界の錬金術の神髄と言えるのではと、自画自賛してる。


 さて、錬金術師たちに最初に学んでもらうのは、科学と言いたいが流石に一から教えるのは大変だから、色んな材料から俺の作り方、作ったものを教えて覚えてもらう。


 これは言うなれば魔法科学とでも言えばいいのか、元素記号や化学式の無いもの。原料から生成物を工程なしに作る錬金術。


 器具は現状作る必要がないので、石鹸、シャンプー、リンスから作って貰う。

 初めに材料から必要な成分を分離、抽出することから教える。


 本来は元素や元素記号を教えて、科学を教えないといけないのだろうが、俺だって高卒程度の知識しかないし、そこまで専門的には教える事は出来ない。


 一応ラノベや漫画、ホームセンターの講習で知ってる程度の知識だが、使ってる大まかな材料名は知ってるので、何から抽出できるとか、分離すればいいと言うことはわかる。この世界では魔法や錬金術があるので、化学反応とかという工程がすっ飛ばせる。




 オリーブから油を抽出するにしても大量でなければ、錬金術で出来る。

 将来的にはこの部分は人の手によって行ったほうが大量生産には良いとは思うが。


 この世界にセメントがないので石灰石というものが認識されていないので、ここは説明が必要でちょっと困ったが、後の苛性ソーダの作り方は割とすんなり行った。


 出来る物を教えてその名前を言いながら錬成すれば世界が勝手にその物質を作ってくれる。


 正直、世界の発展や今後の研究をするなら、元素別に分離するという方法も出来なくはない。ただ気体や液体としてか存在できない物は正直どうなるか解らないので、今は考えないことにした。


 異世界だから全て固体で現れるなんて事もあるかも知れないが……


 一日かけて石鹸、シャンプー、リンスの作り方を教えた。流石は自分達に必要なものだし、虐げられていたとしてもスキルで錬金術を持ってるだけに三人とも覚えも良く、失敗も最初のうちだけで成分の抽出も分離も結合まで成功した。


 錬金術というのは本当に魔法だ。化学式も何も知らないのにこれからこれが出来るよと思えばいいだけなのだ。


 ただやはり習熟度は関係があって最初のうちは当然のように失敗する。鑑定で出来たものを鑑定すると違うものが出来ていたりする。


 この世界の魔法科学(錬金術)は鑑定ありきのような気がする。変な話失敗して出来た物質は俺の鑑定では一応化学物質ではあるんだよね。


 化学式で言えば他の元素がくっついていると言えばいいかな?


 俺の知識ではそれが何に役立つかは解らないだけで、それを研究すれば違ったものが作れたり役立ったりするかもしれない。


「お疲れさま、今日はこの辺で終了にしましょう」


 こちらが終了と言わないと、この三人は何時までも続けそうな程、没頭して作り続けていた。


「え! やめるんですか?」


 嫌々、昼食も適当に取って作り続けていたのにまだやる気なの?


「もう石鹸やシャンプー、リンスに関しては材料さえ有れば作れるようになってるし、これ以上やる必要ないでしょう?」


 実際今出来たものを入れる箱がもう殆どないんだけど……


 液体のシャンプーとリンスなんて入れる陶器の壺がない。


「もう入れる容器や箱がないんだよ」


 そこまで言ってやっと自分たちの周りをみて


「あれ? もう入れる容器がないのですね」


 どれだけ没頭して作っていたんだよ?


「明日はどうしようかな?」


「なぜですの? まだ化粧水も作り方を教えて頂いていませんが?」


「化粧水は入れる容器をガラスにしないといけないんだよ」


 そう言えばこの世界ではスライムでガラスもどきを作っていたな。

 スライムでプラスチックもどきが出来ないかな?


 前世では化粧水はガラスじゃないといけないけど、この世界のスライムから出来たものだと問題ないかも?


 これは実験あるのみ、楽しみが増えた。


「ガラスは今現在俺しか作れないから、作っても大量には作れないし、製品として世の中に出せない」


 どうするかな? 明日は?


 そうだ明日は全員のレベルを上げるか、そうすればMP、HPが上がるから、色々好都合だ。半日はレベル上げをして、午後から化粧水の作り方を教えても十分だろう。


 俗にいうパワーレベリングだ。この森の魔物だとレベルも高いから、森の外でやるよりこの世界の人でもレベルは上がり易いだろう。


 この先この世界にない物を生み出していくのだから、当然軋轢がないなんてありえないだろうから、少しでもレベルを上げておけば自己防衛ぐらいは出来るだろう。


 MP、HPが増えれば身体強化も出来るから、その辺のレベルが3や4位の一般人なら対抗できるし、チンピラや盗賊なら10までいかないから余程の事が無い限り逃げるぐらいは出来るだろう。


 冒険者でもベテランと言われる人で10~15位、30までいけば最強クラス、人族最強が過去に50だからね。


「しょうがないですね。では夕食の後に早速自分たちで作った石鹸などを使ってみましょう」


 夕食時に明日の予定を話した時、初めは困惑したようだったが、理由を説明したら皆納得してくれた。


 フランクは性格上ワクワクしてるのがわかるし、女性陣は今後の展開を予測できたのか、男尊女卑の世の中に不満があったのか、強くなろうと言う意思が顔に出ていた。







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