第53話 辺境伯訪問2

 ガラス工房の次は女性陣には関心が深い、錬金術工房。

 次は錬金術工房と言ったとたん、ローレライとロッテの目が光ったように見えた。


「この工房で石鹸、シャンプー、リンス、化粧水、ハンドクリームを作っています」


 そう説明してる時に、領主一行は奇妙な顔をしていた。


 錬金術師に女性はいる。それはみんな知っていることだが、普通は男中心なのも当然知っているのだ。それが此処には女性しかいない。だから奇妙な顔をしていたのだ。


「男性の錬金術師はいないのか?」


 ビクターはこの世界の常識から何も考えずそう聞いてしまった。


「ビクター様、こちらで作っているものは男性も使いますが多くは女性です。だからこそ女性が作った方が安心するのです」


 ローレンがかさずそう答える。 


 ビクターはそう言われたのでローレライの方を見た、するとローレライは「うんうん」と納得していた。勿論、横のロッテも。


 その時目ざといローレライは、テーブルの横にあった箱の中に見慣れない物があるのに気が付いた。


「ローレンあれは何ですの?」


 ローレライは箱を指で刺しながら質問した。


「ローレライ様あれは新商品でございます。乳液、口紅、ファンデーションというものです」


 この日までにグラン家の女性陣、錬金術師の三人はこれらの化粧品を使って自分達を着飾っていた。


 ローレライは始め気づかなかったが、視察が始まってローレン達が傍に来た時にローレン、フランソア、シャーロットが凄く綺麗に見えていた。


「もしかして、ローレン達はあれらをもう使っているの?」


「はい、ローレライ様、女性が顔に使うものですから商品が出来てからは私共で試験的に使っております」


 ローレライにしてみれば何とも羨ましい事だが言われてみれば、確かに試験は必要だろうから納得するしかなかった。


 錬金術工房での一幕の後、一日半の移動で疲れているだろうということで、今日はこれ位にして宿泊施設に案内することにした。


 今回ユウマが作った宿泊施設は2階建てで2階に個室が4部屋、1階に大部屋が2部屋のかなり大きいもの、それとは別に食堂とお風呂もあるのだからちょっとした宿屋並だ。


 それぞれの工房の案内の時には一行も気づかなかったのだろうが、宿泊施設に案内された時に一行がさらに驚愕した。


「グランあれは何だ?」


 ビクター達を先ずは食堂に案内しお茶でも出そうと思っていたのだが、食堂には誰もいないのに、テーブルの真ん中に光球が浮いているのだ。


 この騒ぎは先に施設を案内された、副家令のマイス、見習い侍女、休憩所に案内された護衛騎士たちも同じ反応だった。


「ビクター様、あれもいずれ商品として売り出される予定のライトの魔道具です」

 グランは何でもないように、ライトの魔道具を説明、しかしまだ未完成品だと言う事も説明する。

 グランは以前ユウマから、本来は天井につけたいからまだ完成ではないと、言われていたのでその通り伝えた。


 遡る事ユウマが森で乳液などを完成させていた時、そうチートオブチートが発生た時に実はユウマは以前から調べたかった魔法陣について答えを見つけてしまっていた。

 以前の魔石に直接魔法を入れるだけだと、入り切りが出来なかった。ただ一度入れた魔法は消えないので魔力が無くなるまで使い続ければ良かった。


 ライトならまだいいが水や火をつけたままには出来ない。だから一度使い切ってから必要な分だけ魔力注ぐやり方で使っていたが、鑑定EXが検索が出来るようになったと同時に、魔法を魔法陣としても見る事が出来るようになっていた。


 だから魔法陣を解析、どの文字が何にあたるかを研究したのだ。


 その結果入り切りが出来るようになった。しかしまだこの世界に魔法陣が存在するかは確証を得ていないので、これ以上はまだ公開するべきじゃないと、従来のライトの魔道具をユウマはグランに作った。


 それでもユウマは森の拠点には暫く人も来ることが無いと思って、ちゃっかり自分の家ではスイッチ付の魔道具を使っている。


 ただそれでも離れた場所にスイッチをつけることは出来ていない、銅線のような物が無いから。


「そうか、凄いものだな」


 ビクターは疲れていた、もうお腹一杯というほどに。だからそれしか言えなかった。


 しかし、これだけでは済まなかった。夕食は信じられないくらい美味しいものがでるし、領主邸ではローレライに使わせてもらっていない、石鹸、シャンプー、リンスを自分で体験したから、もう寝ると言うより放心状態で気絶するように眠ってしまった。


 翌朝は、領主一行全員がサラサラの髪、女性陣は顔もつやつや、どこか呆けていた。


 朝食後、グランは辺境伯にこれからの事を相談した。


 拠点を見せたし、これから売り出される物も研究中の物も含めて見せた。


 辺境伯があまり興味を持っていなかった、レンガでさえ現物としてどう使えるのか実感して貰えただろう。


 だから特許という仕組みが必要になると……


「グランよ確かにそのほうの言う通り、今ある商品だけでも世の中がひっくり返る物ばかりだ。それがこれからまだまだ増えて行くと言うのであろう?」


「はい、その通りでございます。申し上げにくいのですが本当はもっと凄い物もございます。ですが今はまだ公開できません」


 グランはポーションの事を匂わせた。


「怖いのグランがそこまで言うとなると」


 ビクターも賛同してくれたようだから、実際にどうすかを話し合っていく。


 国外の事は今話してもどうしようもないので、今は国内だけに絞って議論する。


 時間もないので、大まかな道筋だけ決めてビクター一行はそうそうに帰って行った。


 決まったことは、国で法律を作って貰うと言う事。それはビクターによって進めてもらう。


 しかし法律を作るには王家や貴族に根回しがいるので、先ずは王家に献上出来る物はする。それと同時にローレライによる、貴族のご婦人方の引き込みも並行して行う。


 商業ギルドは国の法律が出来た後に窓口になるよう要請する。


 大体はこんな感じ、あくまで道筋だけだから、実際の法律に対しては決める時にビクターを通して国に要望を伝えることにした。


 特許の問題はこれでぐらいで済んだが、この先ポーションが世に出る時には教会や錬金術ギルドとひと悶着あるだろうとグランは思い気がめいる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る