第347話 産業革命は続く
エンダーがまだ未熟な体を使って必死に俺に伝えた内容は、俺の想像を遥かに超えていた。
なんとその内容は……まだ一歳にも成っていないエンダーにパワーレベリングをしていたのだ。流石に生まれて半年の赤ちゃんに石を投げる事は出来ないから、初めは桶の中に魚というか、魔魚を入れてそこに石を握らせたエンダーを連れていき、石を偶然のように落とさせて、石が魔魚に当たったら、料理人がとどめを刺して経験値をエンダーに入れる方法を取っていたようだ。
しかし、その後が悪かった。魔魚ならまだ経験値が少ないから影響はないが、それをスライムでやったから一気に経験値が入り、エンダーのレベルが1上がった。ある程度の年齢の子供ならレベルが1上がっても問題ない。急激に2~3とか上がらない限りね。でも生後半年の赤ちゃんが1上がれば、それは子供の2~3急激に上がったのと同等の経験値が入ることに成るから、体の方が耐えられず、体調が悪くなる。
エンダーが幾ら虐待されていた子供でも異世界物の話ぐらいは知っているから、直ぐに自分がやらされている事の意味は分かったそうだ。だけど、急激にレベルが上がったらこの世界ではどうなるかなんてこと迄は知らないから、面白がって付き合っていたようだ。
結果、物凄く体調が悪くなり、暫く昏倒していたそうだ。初めはエリーも慌てたようだが、ニックに見せたら昏倒してるだけだと言われ安心し、その後フランクに鑑定をして貰いレベルが上がっている事を確認したから、更に拍車が掛かり、散歩と証するパワーレベリングが連日続いているらしい。
「それは災難だったね。でもエンダーも面白がっていたんでしょ。そこは反省しないとね。これからは暫く俺も一緒に居るし、この世界の事を教えてあげられるから、安心して。それとエリーも悪気があったんじゃないと思うよ。この世界の仕組みでね、レベルと寿命は関係があるんだ。レベルが上がると寿命が延びるからエリーはエンダーが長生き出来るようにしたかったんだと思うよ。まぁ少し早いとは思うけどね」
「パ・パ・わ・か・つ・た」
「この世界の仕組みは変っているから、これから覚える事は沢山あるよ。それとこの世界は前世と比べるとかなり遅れている。それも歪にね。魔法やスキルがあるのにそれを活用できていないんだ」
俺はエンダーに俺が転移して来た時からの事を掻い摘んで話して聞かせた。この世界の人達の思考がおかしかったことで殆どの事が遅れていた事や、それをどうやって俺が変えて来たかを……。
「エンダーは自分のステータスを知っている?」
「し・て・い・る」
「そう、それなら今のステータスが隠蔽されている事にも気づいているよね」
「う・ん」
「この世界にそんなステータスの人は居ないから、決して見られたり、話したら駄目だよ。レベルが鑑定持ちよりかなり上がれば、見えなくなるけど、今この世界の人はレベルを上げる傾向にあるから、俺が良いと言うまではステータスはこのままね。自分で隠ぺいを外したら駄目だよ。エンダーは全属性持ちだから、隠蔽魔法を使えるようになるかもしれないから」
「わ・か・つ・た」
「それと一番大事な事は、エンダーは神様にこの世界を変える力を貰っている。固有スキルのスキル創造ね。これは世界を変えることが出来る力だから、慎重に使ってね。でも、世界のシステムが出来ない事や、やってはいけない事は拒否するから、そこまで考え過ぎなくても良いけどね」
それから暫くサラが戻るまでこの世界の事や、エンダーに出来る事を教えて行った。そして最後に、
「エンダーが大きく成ったら、パパと一緒にこの世界を変えて行こうね」
「わ・か・つ・た。げ・む・み・た・い・て・た・の・し・み」
失敗だ~~~、宇宙人の会話じゃないんだから、これは拙い。俺は五十音表に小文字や濁点などを付け足した……。
あれから4年
「パパ、今日は何処まで行くの?」
「そうだな……。ママがラロックとユートピアに用事があるって言っていたから、暫くは無理かな」
「えぇ~~~、この間この大陸の魔境の調査に行くって言っていたじゃん」
じゃん? どこでそんな言葉……。あぁ前世か。時々エンダーが転生者だという事を忘れることがある。それだけこの世界と俺達に馴染んだという事なんだけどね。
「エンダーはパラダイスにはまだ行ったことがないだろう?」
「パラダイスってユートピアの先にある島の事だよね。それならまだ行ったことがない」
エンダーはユートピアで一歳半までしか過ごしていないから、パラダイスに行く機会が無かった。何故なら、エンダーは一歳半の時にインカ大陸に出来た新しい国、グランドセントラルに俺達と一緒に移住したからです。
現在ユートピアは形式上グランドセントラルの属国という扱いだが、国王は俺が兼任している。本来は議員達に任せて共和制にする予定だったんだが、国民から猛反対されて、王は俺がそのままやるという事になった。
国名の違う二つの国の王が同じなんて普通あり得ないんだが、ユートピアという国名を変えるのも国民が嫌がったので、現状のようなことに成っている。普段は議員達が国を運営しているが、大きな問題や何かあった時だけ俺が介入している。
これなら共和制で独立したら良いと何度も言ったのだが、がんとして国民も議員たちも反対するからどうしようもなく現状を維持しているのです。
「ユートピアに折角行くんだから、今度の旅でパラダイスに行こう。そしてダンジョンにつれていってあげるからそれで我慢して」
「ダンジョン! それは行きたい! この大陸ではまだ見つかっていないからいけないもんね」
「そうだろう。だからそれまでは我慢して、もう少し魔法とスキルの勉強をしていなさい」
魔法は別にしてエンダーはスキルの勉強は本来必要ないんだけどね。だって自分で作れるからね。でもこの世界のスキルについては俺達も全部把握していないから研究する必要はある。だから、国民を手当たり次第に鑑定させたり、こんなスキルがあったら良いな等を勉強と証して研究させている。
「あぁ~~でもママは本当に行くの?」
「行くと言っているよ」
「でも、ママのお腹には私の弟か妹がいるんだよ。大丈夫?」
「エンダー、ママが行くと言っているんだ。駄目と言って聞くと思う?」
「ないね。ママだもん」
そう今サラは二度目の身重の状態なのです。何故こんなに間が空いたのか……。俺は頑張っていたんですが、作らせてくれなかったんです。自分のレベル上げに集中したいからと……。その結果サラのレベルは俺の協力もあり現在70を超えています。そうすると必然的にエンダーも上がる訳です。何時も行動が一緒ですからね。
エンダーはまだ5歳になっていませんが、既にレベルは50を超えています。1歳になる前からレベリングしていますから当然と言えばそうなんですが、エンダーも成人すれば色々やることが増えて、レベル上げする機会も減るでしょうから、今はこれで良いと思っています。
「だから、それまでは我慢してね」
「わかった。ダンジョンか~~楽しみだな……」
そんなこんなで俺達を取り巻く環境も色々と変わって来ていますが、エンダーという転生者が加わって、これからもこの世界の産業は変革していくでしょう。
だから魔法世界の産業革命に終わりは当分来ないようです。
いったい何時まで続くのやら……。
完
*************************************
評価 まぁ読める ☆
まぁまぁ面白い☆☆
面白い ☆☆☆
執筆活動の励みになりますので宜しくお願いします。
あとがき
これでユウマが主人公の物語は一応完結します。時間を見て改稿はするつもりですが内容的には大きく変わらないと思います。
今後登場人物は同じで第二部とも言える、エンダーが主人公の物語は書くつもりです。構想としてはエンダーが成人するまでか、幼児時代だけになるか今考え中ですが、今後公開する作品を書きながら少しづつ書いて行きます。
長い間私の拙作を読んで頂きありがとうございました。本当に感謝の言葉しかありません。
他にも連載中の作品もありますので良ければそちらも宜しくお願い致します。
異世界転移 産業革命を添えて まほろば @musasi926
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます