第121話 大使視察2

 今日は学校の視察から始まる。


 今回の視察に参加してる大使は全部で6か国、この大陸に存在してる国全部です。

 大雑把な配置はこんな感じ。


    ロッテン神聖国

   

                     魔境の森

         グーテル王国

           

 ビーツ王国      エスぺランス王国    ザリウス帝国 



                マール共和国



              フリージア王国 



 この他にも国とは言えないがドワーフ、獣人、エルフの集落はある。

 集落は一か所ではなくそれぞれの国に点在している。


 マール共和国は共和制をしいている、この大陸唯一の国。


 この国はどちらかというと商売人の国、だから利益には目ざとい。


 今まで、この国が動いて来なかったことが不気味なくらい。


 フリージア王国は温暖な地域で、国民の多くがおおらかな性格をしている。


 この国からも砂糖を輸入出来たら良かったのですが、途中にマール共和国があるせいで、関税がかけられビーツ王国より割高になる。


 グーテル王国は、エスぺランス王国とは兄弟国と言われるくらい仲が良い。


 当然王族の婚姻も行われているので繋がりが非常に強い。


 グーテル王国はどちらかというと小国なので弟という立場。


 だから学校や病院が出来て国立という事に成った時に、グーテル王国からも留学生が来ている。


 これは俺もグラン達も知らない。貴族や王宮の役人とか王宮の薬師として扱われているから。


 ザリウス帝国は、この大陸にあるこれまた唯一の帝国。


 帝国というだけで基本は王制と何ら変わらない。ただ軍事国家とまではいかないが、軍備に力を入れていて、国の要職に軍部の人間が複数存在する。


 ビーツ王国は非常に気候が極端な国なので、国のかじ取りが難しい国。


 北部と南部では生産されているものが極端に違うし、砂糖という武器を南部が握っているので、勢力バランスでは南部が少し有利。


 ただ他国とのつながりを持てるのが北部だけ、ビーツ王国の南部は高い山脈で阻まれ他国との往来が非常に厳しい。


 そして残るはロッテン神聖国、この国が一番の曲者。


 信仰をたてに大陸中の国で好き勝手やっている。


 それぞれの国の教会の人は地元の人も多いのですが、国ごとの教会の要職は全て神聖国の人間なので、自然と教会の人間は神聖国のやり方に染まって行く。


 配置を見ても解るようにエスぺランス王国は大陸の中心、神様が俺をこの国に転移させた理由の一つでもある。多分?


 その国で医療システムが変革されようとしているから、神聖国は物凄く危機感をもっている。


 だから今回の視察ではこの国が一番要注意。


 朝から学校の施設や授業風景を視察していた大使たちは驚愕の連続だった。


 これは国の視察で訪れた時のカルロスや王と同じ反応だった。


 そこで行われている教育が自国ではありえないほど高度で、スキルの発現もほぼ保障されていると聞けば、自国の師弟制度の愚かさが身に染みる。


「ソルト殿、これは本当に拙いです。このままでは我が国は置いて行かれる」


「私も同感ですピッケル殿、ただ報告を上げるだけでは対応が遅れるでしょう。その間にエスぺランス王国との差は広がるばかり」


「聞けばこの学校はもう3年も前からあるという。それに今年からは病院という施設も出来ています。帝国も我がビーツ王国も一刻の猶予もありません」


 この二人と同様に、他の国の大使もこのままでは拙いと言う事は理解出来ているようです。


 ただ一つの国を除いて……


 授業が終わり、休憩時間に成ったとたん大使たちは、生徒を捕まえて質問攻めにしていた。


 ただまだ入学してそれほど経っていない生徒ですから、詳しい事は殆ど解らなかった。


 正直、内情を聞きたいなら卒業生に聞いた方が余程役に立つのですが、大使たちにはそこまで気が回るほどの余裕が無かった。


 その後、授業や実習棟の見学などをし、昼食を挟んで病院の視察に成った。


「おい! 君、次は病院の視察のはずだが、ここはどう見てもそのように見えないのだがどうなっておる?」


「ここは病院の入り口です。御不安でしょうが、ご案内しますのでついて来て下さい」


 今日の案内役をしているフランクは、意味ありげに質問してきた大使に丁寧に答えた。


 小屋の中に入り、地下へと降りてトンネルを抜けると、そこには想像もできない程大規模な建物が立ち並んでいた。


「な! なんだこの規模は! 病院と聞いていたから建物がひとつ建っていると思っていたのに、これは学校と同等いやそれ以上」


 学校は教室に何十人と入るし、寮も4人部屋とかだから建物自体はそう大きくはない。


 でも病院は殆どが感染対策として1人部屋の病室だから同じ1000人対応でも規模が自ずと大きくなる。


 勿論、病気ではない怪我の患者などは複数人で一部屋と言う事も有るが、この病院では比率が低いので数が少ない。


 病院では午後なので普通なら俺による実習が行われているはずなんだが、今は俺がいないので、顕微鏡を使った色々な菌の写生が行われていた。


 俺は他にも色々と課題は出している。冒険科の生徒の実習で殺さずに持ち帰ったホーンラビットなどの魔物の解剖や疑似手術をさせている。


 細菌の写生は、この先本を作る時に役に立つので一石二鳥なのです。


 学校では薬師科でも顕微鏡は使いますが、今日は使っていなかったから大使たちは、初めてここで目にした。


「あれは一体なんです? それに何をしてるのです?」


「あれは顕微鏡といいます。そして今は顕微鏡で細菌を見てその形を紙に書いています」


 そう答えたのはニック、病院内の案内はニックが担当している。


「細菌? なんですそれ?」


「そうですね、口で説明するのは難しいので一度現物をみて見ますか? 希望者はこちらへどうぞ」


 勿論、全員である。ここで見逃したら後でとんでもない事に成ると、大使たちはこの視察で痛感させられている。


「な! なんだこれは! 見たことも無いぞこんなもの」


 当然だよね目に見えないんだから、ものが有るのは解っていてもその形までは目で見る事は出来ない。


「これが菌ですね、細菌とも言います。 このような細菌が原因の病気が存在しますが、今までは治療できませんでしたが、この病院では全て完治させています」


「も! もしかして王都ではやっていたあの病気もこれが原因か?」


 お! これは情報通で理解力の高い人だ。この大使は優秀だなとニックは思っていた。


 だがこの人知っていて当然の人でした。そうですグーテル王国の大使ですから。


 まぁニック達はグーテル王国の留学生がいることを、知りませんからしょうがないんですが。




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