第191話 ミランダの成長
漸くフランク達の休暇も終わったので、ラロックに戻る日がやって来た。
「それじゃ久しぶり、出勤しますか」
「戻ったら、忙しくなるぞ。定規と物差しの特許申請。コンパスの材料探し。スキルのあのカギについてもどうにかしないといけないからな」
確かに戻ったら色々やることはあるけど、この国はトップも意識改革出来てきたから、段々俺の仕事は減ってくるはず。人任せに出来ることが増えてきたからね。
実際今回の休暇でも以前のような俺が指示を出したわけではなく、皆で対策を考えて対応しただけ。
今までは会社でいうと社長の下には良くて係長クラスの社員がいただけだったが、今は副社長も役員もいる。もう少しすれば会長職になって運営は社長に任せて自由な時間も増えるだろう。
フランクが言った忙しくなるという要因も、俺がやらなければいけないのはスキルのカギぐらいで、後は全てフラン達に任せられる。
「もう着いたの? ユウマさんこれなら森の家から通えません?」
「通えますよ。だから出発前に出勤と言ったでしょ」
魔境の調査から帰って数日ゆっくりしてる間に、俺は一つの計画を考えていた。それは俺の家のではなく屋敷を持とうというもの。
現在の家はそのまま残して、魔境の森のさらに奥に屋敷を建てようと思っている。この先今まで以上に森の家に人が来ることが増えそうだから、その前に誰も知らない第二の拠点を作って置こうという事です。
今回の調査の途中に候補地の目星は付けてあります。今回は建物は建てません。見た目的には小高い丘にしか見えない所に、洞窟タイプの屋敷を作るつもりです。
飛行船から見てもそこに屋敷があるとは分からないように、木などは伐採せずにそのまま残して、カモフラージュします。
秘密基地のような屋敷です。そこの事は俺とサラ、エリーぐらいにしか教えません。もしかすると数人はメイドなどを雇うかもしれませんが……。
もう少ししたら、3勤2休にしようと思っている。その次は1勤3休、週1勤務……と減らして行き、最終的には出勤無しに持って行く。
久しぶりの出勤だから、先ずは留守の間の報告をスーザンとニックから受けて、その後、顔見世も兼ねて全ての施設を見て回った。
最後に拠点の地下の工場を訪れた時、ミランダから凄い報告を受けた。
「ユウマさん、これを見てください。グランさんに鑑定して貰ったら、この化粧水、少し老化を防ぐ効果があるんです」
え! まさか化粧水に魔石を混ぜた? 俺が家で研究したことをミランダがやった?
「凄いですね、どうやって作ったんですか? 聞いても良いのなら教えてください」
「ユウマさんに隠すようなことはありませんから、勿論、教えますよ。これは改良ポーションから、ヒントを得て作りました。ポーションに魔石を混ぜる事で効果が上がるなら、化粧水でも同じではないかと思って試してみたら、これが出来ました」
おぉ~~~ 感動する。思考が俺と同じだ。こういう気づきが出るように成れば、この先も、もっと色々作り出していくだろう。
「良くそこに気づきましたね凄いです。そこまで行ったのなら、他も化粧品でも試しました?」
「いえ、まだ化粧水だけです。でも魔石の種類や魔石のレベルで、どう違うかは今やっているところです」
これは凄い成長ぶりですね。直ぐ他の化粧品に行かず、魔石の種類に注目するなんて、色々教えてきた俺としては最高の喜びです。
それじゃ、最後にもう一つ、これからの為にアドバイスをしましょう。
「この化粧水に魔力を付与してみましたか?」
これは効率を教える為だ。同じ結果を生んでも、効率が悪いものは意味がない。それを分からせるため……。
「魔力を付与?」
「魔石も魔力でしょ、それなら魔力そのものを付与することも出来ますよね」
魔石に魔力を補充するのも一種の付与なんだよね。でもそれを付与だと認識していない。実際付与術のスキルは表示されないからね。付与は魔法を入れるもで、魔力を入れるものではないと、思っているからです。
ポーションでも錬成陣を使っているから、魔力を付与してると思っていないが、ポーションは魔法薬、魔力が入っている薬なんです。
ここまで分かると、もっと広がって行く。普通の薬に魔力を付与したらどうなるか?
俺がこれを教えても良いけど、この先はミランダやニックに任せよう……。
「やってみます。ですが、それだと出来ても作れる人が限られますね」
よしよし、ちゃんと分かっているね。同じものが出来ても生産効率を考えれば、付与術を持たない錬金術師が作れる方が良い。
「ところで、エマさんとローズさんが見当たりませんが、お二人は何をしてるんですか?」
「あぁ二人はですね……、エマは魔石の付いたアクセサリーを作って貰って、それに結界の魔法を付与しています。ローズはそれに使う魔石を取りに、魔境の森にミュラー元公爵の所の騎士様と行っています」
なんだ? この含みのあるような言い方は……。
「ユウマさん、これは春が来たんですよ」
「春?……。 あぁ~ そういうことですか。なるほど……」
この先は口に出せなかったが、ミランダは二人が羨ましいのね。他の二人には春が来たのに、自分には来てないから、仕事で紛らわしていると……。女心は複雑ですね。
それにしても結界の魔道具ですか、それもアクセサリータイプの、こういうのは、やはり女性ならではの発想ですね。
ローズもレベルが上がって、素材を自分で採りに行く錬金術師になりましたか、こういうタイプの錬金術師もこれから増えていくんでしょうかね?
付与かぁ~ ミランダと話していて思ったが、魔法とスキルの付与は研究したけど、まだやっていない研究がある事に気が付いた。
これまでの付与は魔石への付与だったが、魔石以外の物に付与は出来ないのか? 以前少し考えたことがあったな。補助魔法、スキルや魔法を持っていない人に、魔法とスキルを付与すること。
これは考えたが、この他にも付与術を持っていれば、物にも付与できるんじゃないだろうか?
魔法はイメージですから、付与術というスキルはイメージも付与できるはず?
一番に思いつくのが、剣に付与する事。その際、剣その物に出来るのか? 剣に魔石を埋め込んで付与するのか? 剣を作る時に魔石を混ぜて付与するのか?
色んな可能性がある。全部出来ないかもしれないし、全部出来るかも知れない。もしくは一部という事あり得る。
剣を作る時にミスリルを混ぜて、それに付与するという方法もあるけど、これは今は出来ない。だけど俺はやってみよう! 魔刀があるから……。
物に付与が出来るなら、異世界ファンタジーの定番、斬鉄、不壊、鋭利とか出来るかな? 出来たとして永続的なものか、そうではなく一時的なものなのか、魔石を取り付けてそれに付与すれば永続になるのかなど、試すことは沢山ある。
そう言えば、エマが作っているのは、魔道具ではなく、魔宝具かな?
今思いついたけど、これもやってみたいな。剣を作る時の鉄に魔石を混ぜ込む、出来るかどうかは分かりませんが、出来たらその金属は魔鋼とでもいえば良いかな?
魔石の使い道がどんどん増えそうだ。以前は魔方陣の魔道具が普及すれば、需要が減ると思っていたが、この分だと使い道はまだまだありそう……。
魔石を混ぜ込んだ物なら付与が出来るなら、それこそ使い道は無限大。魔道具が販売されてからまだ期間が短いから分からないが、魔石にも劣化があるかもしれない?
研究課題は尽きることがないな。
物に魔法は掛けられる。それなら物に付与はやはりできるだろう?
飛行船に重量軽減魔法が掛けられるんだから。そうなると馬車にも掛けられる。
気づけよ、俺……。
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