第251話 目的達成
昨夜は気持ちの整理をする為に、必死にこの世界が異世界であるという事を何度も繰り返し、頭の中で念仏のように唱えながら眠りについた。
これまで確かに異世界らしい物は存在したよ。ローム糖のローム何て見た目はゴボウだからね。それでもだよ、流石に玉子は普通であって欲しかったよ……。
まぁうずらの卵も模様はあるからありっちゃありなんだが、原色に水玉模様はインパクトあり過ぎ。俺は転移者だからどうしても前世のスーパーなんかに並んでいる、玉子10個入りのパック販売を思い描いてしまう。
そこに黄色い水玉模様の玉子が並んでいるのを想像しただけで、うげ~となるわけですよ。これはどうしようもないことなんだけど、やっぱりね……。
神様、言っちゃ悪いがこれだけはセンスないよ。芸術とそうでない物は分けようよ。
「おはようございます。ユウマさん」
「あぁ~、おはよう」
「ユウマさん、なんか元気ないですね? よく眠れませんでした?」
これは拙い、サラに俺の心が読まれてしまう。空元気でも良いからテンションあげないと、色々追及されそうだ。
「そうなんだよ。昨日なんだか寝つきが悪くてね」
「それはいけませんね。それなら今晩からサラお嬢様が添い寝をして差し上げれば良く眠れますよ」
「え!」
おいおい、この若くなった婆さんは何を言っているんだ。この人お義母さんから何か指令を受けていないだろうな? 貴族のお嬢さんの婚前旅行だからわざわざあんたを連れて来ているのに、それをぶち壊すような事言うなよ。
前世の世界なら、婚前交渉何て普通に会った時代だけど、ここは異世界だし、貴族のいる王政で言ってみれば中世、日本で言えば室町時代より少し前、鎌倉時代くらいか? この世界は歪に発展しているから一概にはいえないが……。
それなのに、どうしてそういう事に関してはオープンなんだ? いや、単なるこの家族がそうなだけか? 以前フランクからこの世界の貴族について聞いた時、やはりこの世界も貴族の女性は婚約破棄されたら傷物に成ると聞いたことがある。
考え方は俺が良く知っている貴族や武家の考え方そのものだ。それなのに、この家族、いや、お義母さんとエリーが特殊なのか? 何かにつけて俺達に早くそういう事をさせようとしている。
俺はそういうことが出来ない、一種の〇〇DTなんだよ。頼むからそういうのは結婚式が終わるまで待ってくれ。
「ユウマさん、私は構いませんから、遠慮なく言ってくださいね」
「はい、その時はお願いいたします」
サラから止めの一発を貰ったから、これ以上は反論しても無駄だと思い、そこは適当に返事して、スルーすることにした。本当に小心者には対処に困る案件なんだよ。
何時までも彼女らのペースに巻き込まれていては目標が達成できないから、気を取り直して、今日の目的であるガルスとその玉子の捕獲に入る。
とその前に、捕獲した後の準備が先だな。
取りあえずは土魔法で囲いを作ってそこに捕獲したガルスを入れて置けば良いかな?
どうせスリープで眠らせて捕獲するからそのまま放置でも良いんだけど、流石にあの数は放置すると邪魔に成りそうだ。それに、ティムは此処でするか後からするかまだ決めていない。
ティムは上書きできるから、俺達が掛けても後から変更は出来るが、面倒なんだよ正直。養鶏という形で飼育するならそれなりの数が必要だから、それ全てにスリープとティムをこの場でするのは……。
捕獲の為のスリープは仕方がないとしてもティムは掛けなくても何とかなると思うから、取りあえずは捕獲してから考えることにする。
「サラとエリーさんはこの魔法陣でスリープの魔法を掛けてください」
サラは魔法陣が無くても出来るだろうが、まだ習熟度が高くないから、魔力量が多く必要なので、安定した魔力量で魔法が発動できる魔法陣を今回は使わせる。その方がMPがもつからね。なにせ、数が数だから……。
「サラ、目標は此処にいるガルスの三分二にの捕獲です。残りは今後の為に残しておきますから、そのつもりでお願いします」
「え! 三分の二ですか? それ物凄い数に成りますよ」
「ラロック、ユートピア、ミルの三か所分ですからそれぐらいは必要なんです」
言ってる俺も無茶な数字だとは思っているが、産業として養鶏をするならこれぐらいは必要だからしょうがない。それでも此処にいるガルスの三分の二となれば、五千羽はいくかな?
問題はその五千羽をどうやって運ぶかなんだよな……。
う~~ん、やはりそうなるとティムするしかないか? ティムの魔法も進化しているから、簡単な命令なら出来る。ついてこさせるぐらいの命令なら問題ない。
しかしな~~、自分で言っておきながら、この数のティムはやはり面倒だ。
複数の的に個別に魔法を放つのはアクイラの時にやったけど、それでも数はそんなに多くなかったからな。この数にその方法では焼け石に水だ。しょうがない、出来るかどうかは分からないが、創造魔法でエリアヒールみたいにエリアティムの魔法を作ってみるか。
作ると言っているが、作る=発動するだから、今はまだ作れない。ガルスの捕獲がすんでからやってみることにして、今は……。あれ? それってエリアスリープも出来るんじゃ? いやいや、それは今は止めておこう。折角サラ達が頑張ってくれているんだから。サラ達の努力を無駄にしないように配慮したのだが、その時の俺は物凄い事を見落としていた……。
どれぐらい経っただろうか? 漸く目標の数位のガルスを眠らせた。サラもエリーも相当に疲れているようだ。簡単な魔法陣に寄る魔法だが数の多さで疲労している。途中MPポーションも服用していたから、お腹もちゃぽちゃぽだろう。
それに眠らせたガルスを運ぶという労力もあったからね。
「ごくろうさま、大変だったね。少し休んでいて良いよ。後は俺に任せて」
「ユウマさんはなにをするんですか?」
「ガルスを運ぶのに、ティムして運ぼうと思うから、この全てのガルスを今からティムするよ」
「それは一人では厳しいでしょう。少し待ってくれれば私達も手伝いますよ」
「大丈夫一人で出来るから」
そこで俺はエリアヒールのようなエリアティムのイメージを固めて、範囲内の全てのガルスにティムを発動した。
この創造魔法は世界が認めてくれたようで、魔法は上手く発動した。しかし、その光景を見ていた、サラとエリーの目は驚きより、怒りの満ち溢れた目をしていた。
ん? なんだあの二人の目は? 大掛かりな魔法だったから驚く場面じゃないか? 実際俺のMPの半分以上持って行かれた大魔法だよ。それなのに怒っているような……。
「ユ・ウ・マ・サ・ン! そんなことが出来るなら、何故スリープにも使わなかったんですか?」
あ! そうだ! 範囲ティムが出来るなら、範囲スリープも出来るじゃん。それでか、サラ達の疲労を考えたら、やれるなら早くやれよということだよね。これは間違いなく俺が悪い。どう言い訳しようか?
「えっとですね。範囲魔法は物凄くMPを必要としますので、足りるかどうか分からなかったので、ティムにとっておきました」
これならどうだ?
「それが言い訳ですか? そんなのMPポーション飲めば済むじゃないですか」
そりゃそうだ。実際サラ達はMPポーションお腹がちゃぷちゃぷするまで飲んでいる。これは拙ったな、下手な言い訳をしてしまったようだ。さっきより二人の目が冷たくなっている。
それを何とかしようと思い、疲れているから余計に怒りやすいのだろうと思い、二人にヒールを掛けた。
それが二人の火に油を注いだようで、
「そんなこと出来るMPが残っているんですね」
あちゃ~、これは益々機嫌を損ねてしまった。俺って女性の扱いが下手過ぎる。こういう場合はどうすれば良い? 前世なら……。甘い物! スイーツだ! でもここにはそんなものない。どうしようか? あ! そうだ今ここには玉子があるじゃないか! プリンはちょっとここでは面倒だから、簡単に作れるパンケーキにしよう。
以前も作った事はあるけど玉子が無かったからそこまで美味しくなかった。今なら卵白を魔法で泡立てて、ふわふわパンケーキもつくれる。
思いつたら即行動、サラ達が休んでいる間に魔法を駆使してふわふわパンケーキを作った。それに俺秘蔵のはちみつを掛けて、二人の前に差し出した。
「なんですのこれ?」
「お嬢様これが何かは存じ上げませんが、とても甘い良い匂いがしますよ」
「あら! そうね。匂いはとても良いのね」
「これはふわふわパンケーキと言います。玉子が取れたので是非二人に食べて貰いたいと思いまして作りました。玉子があればこれからこれ以外にも色んな甘いものが作れますよ」
俺がそういうと、それ以上の嫌味は言わず黙々とパンケーキを食べ続け、お替り迄所望されました。
これで一応目標は達成できたな捕獲という所までだが……。
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