第74話 学校開校

 漸く学校が開校します。3~4か月なんて言った事を謝ります。


 結局学校が完成したのは5か月後、だってしょうがないじゃない。教科書作りに奔走しながら、計画を色々思い付きで変更して、下水システムの作り変え、挙句の果てには、貯水池や畑にまで手を出したんだから。


 そうだ、スライムの養殖施設もあったな、本当に何でも思い付きでやるもんじゃないな。


 やりだしたらあれもこれもとなって本当に疲れたけど、納得のいくものが出来たから良しとしよう。


 そしていよいよ今日、学校が開校なんだけど、ここまで来るのに本当に色々あった。


 学校建設や教科書作りじゃないよ。


 学校だけど職業訓練校だから試験は無い。だけど事前に生徒が何人集まるかは把握しないといけないでしょ。だから希望者には履歴書というか身上書の様な物を送って貰うことにしたんだ。


 簡単に言うと申込書かな?こんな理由で入学を希望します。それのついでにどんな人か解った方がいいからそういう事も書いて貰ったの。


 勿論、代筆OKだよ、学校では読み書き計算は一応教えるからね。


 始めの1~2か月で集中的に読み書きは覚えてもらう。計算は卒業までに完璧であればいいから。


 それで送られてきた申込書がなんと2000通以上、これは本当に予想外だった。


 仕方がないので選考をするしかなかったんだけど、送られてきている人の出身領が偏ってるのよ。


 一応、国内の全ての領から来てるんだけど、多い所は100人以上、少ない所は1~2人だから困ったんだよ。


 少ない所は問題がなければそのまま入学でいいけど、その他が問題、均等割りにするのもおかしいんだよね。応募が多いという事はそれだけその領は熱心という事でしょ。


 だから10人以下の所はそのままOKと言う事にして、残った900人位を領ごとの応募人数の比率で決めて行った。


 そして今回、駄目だった人は次回優先的に入学させることにして合否を送りました。


 来年大丈夫かな? このまま行くと来年の入学者はもう決まってるんだよね。


 最悪、来年の募集は無しにする?それはできないよな……


 学校の施設がほぼ完成して教科書も大方出来た頃に突然訪問者が来る事になった。


 なんと宰相のカルロスと辺境伯のビクター、それもご夫人同伴で視察に来るという連絡が届いた。


 まぁ国立なんだから視察に来るのは問題無いけど、出来たら開校後が良かったな。


 だってどんな授業をしてるのか見て貰った方が、この学校の素晴らしさが解りやすいと思うんだ。


 それに開校前は忙しいから貴族を迎える準備なんて勘弁して欲しかった。


 以前のビクター訪問で、準備の大変さは身に染みている。


 知らせが届いてから1週間後、カルロス達が学校を訪問した。


「グラン聞いてはいたがこれは凄いな」


 ビクターの第一声がこれだった。カルロスはまぁ解るよね、口が開いたまま無言だったよ。


 拠点を訪問したことがあるビクター夫妻はそれなりには驚いていたが、そこまででは無かった。


 しかし、カルロス夫妻は驚かない訳にはいかなかった。王都の学校なんてくらべものにならないぐらいの規模だからね。


「な! なんという規模だ。学校? いやこれは町だ」


 定員1000人の学校とは聞いていても実際に見るとその規模に圧倒される。


 その後は校舎、寮、実習施設などを見て回るたびに驚いていた。


 そして何より驚いていたのが魔石の魔道具だ、これはまだ世の中に出す予定が無いものだから登録もしていない。学校で使えば世の中に出してるだろうと、突っ込みが入りそうだが……


 それでもこの学校では敢えて使っている。なぜなら、生徒の意識改革に必要だからです。


 未来の世界を見せたかった、未完成の魔道具でも。


 未完成の魔道具でも、それを目の前にすれば誰しもが欲しがるのは当然。


 未完成であることを何度も説明したがカルロスはもう止まらない。


「この魔道具、是非売って欲しい。どういう仕組みなのだ?」


「何時から販売するのだ? 特許は登録したのか?」


 どこかフランクに似ている、いやグラン一家にかな?


 魔法陣を使っていないこの魔道具は販売してもいいけど、これこそ今は俺しか作れない。そんな事に成ったら、過労死間違いなしだから、それだけは絶対拒否。


 生活魔法なら全員使えるから、錬金三人衆に付与できないか、やって貰ってはいるけど、未だ誰も出来ない。


 これもいつかスキルが生える人がいると思う。付与魔法のスキルがね。


 でも仕事じゃないから、時間の有る時だけ付与の練習をやってるのでスキル発現までにはまだ時間が掛かるでしょう。


 それに、もしかしたらこのスキルには適性があるかも知れない。


 多くのスキルは努力して条件が揃えば発現するが時間的には個人差がある。中には鑑定のように発現しない人もいる。ジーンのようにね。


 この施設にはライト、ウォーター、ファイヤの魔石魔道具が使われている。


 ライトは解りきってるけど照明に使っている。ウォーターはトイレと食堂、あと風呂場。


 ファイヤは食堂と風呂場、風呂場以外は一人の魔力で使えるけど、風呂場は何人かで協力してやらないと無理ですね。


 俺の家で使ってる魔道具は付与してる魔法が普通の魔法。でもここの魔道具は生活魔法だから俺からしたら、プチウォーター、プチファイヤという感じ。だから一度に出せる水の量も少ないし、火力も弱い。


 カルロスがどうしても売ってくれと引き下がらないので、仕方なく最後の手を使う。


 今後一切、魔道具を売らなくていいなら未完成品を売るという条件を出した。


 相手が無理を言うならこちらも当然無理を言う。相手が王や貴族であってもここは引き下がれない。一度許せば際限が無くなる。貴族や王族とはそういう人種だから。


 ここまで言われると流石にカルロスも引き下がるしかない。


 他の人に依頼して買えば良いから、あって無い様な条件だけど。


 そこは貴族のプライドもあるし、魔道具がこれで終わるとは思えないから、我慢するしかなかった。


 学校の視察が終わってから、宿泊施設のある拠点に視察も兼ねて移動する。


 今度はご婦人方が食いついた。錬金棟の見学で化粧品を製造してる錬金術師達が全員女性だという事に驚き、現在新商品を開発中だと伝えると何時商品化されるのかとしつこく聞いて来た。


「ねえ、そこのあなた、その化粧水は何時頃販売できそう?」


「そうですね、殆ど完成はしてるので、後はパッチテストだけですね」


 教科書を作る為に色々調べた植物の中に化粧品に使えそうな物がいくつかあったので、化粧水や乳液の改良をして今後商品化する予定。


 その日は夜遅くまでカルロスを中心にこれからの事が話し合われた。


 この視察の時の内容は後日聞いたことです。対応の内容は事前にある程度、俺とグランさん達で決めていた。


 当然視察の時、俺はその場に居ませんでしたよ。


 そんなこんなで開校前に色々あったが無事今日開校出来る。


 今!目の前には希望に満ちた目をした1000人の生徒が整列している。

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