第18話 初めての異世界旅

 フランクの店は東門に近い所にある。領都に向かうには西門から出る必要があるので、村を横断することになる。


 初めて村に来た時、フランクのせいで村を見て回れなかったので、今はゆっくりではないが見物してる。


 西門方面は、工業区みたいで鍛冶屋や家具屋などの店が集まっていた。住宅は少ないようだ、まあ音が出る店だから、関係ない人からすれば騒音でしかない音が出る所に住みたくはないよね。


 門番に身分証をみせ、西門を出たらそこにはまた新しい景色が待っていた。


 俺の行動範囲は基本魔境の森の中だから、こういう見慣れない景色には心が躍る。


 引き籠りたい気持ちもあるが、こうしてみると折角転移したのに森の中だけというのは寂しいよな。


 目立たないと言うのは変えないが、せめてこの国ぐらいは見て回ろう、そうしないと人生損した気分になりそう。


 馬車は順調に進む、御者をしてるフランクの気持ちのせいだろうか、速度がちょっと早いような?


 この世界の常識に疎い俺でも感じてしまうぐらいに早い。


 このままでは、ちょっと拙いかも? フランクを少し落ち着かさないと、それには思考を別に誘導するしかない。


 そこでフランクに、この辺りの治安について聞いてみた。


「フランクこの辺りは魔物とかでないのか?」


 テンプレの盗賊とは聞かない、いるかどうかもわからない世界だからね、それにもしいるのならフラグを立てたくないしね。


 当然だよ、盗賊って人間だよ、魔物は何故か魔法で倒してるから、忌避感は無いけど流石に人間は何か感じると思うんだ。だから出来るだけ避けたい。


 それでももう一つのパターンは避けられない。


 自分達が襲われるんじゃなく、誰かが襲われているっていうフラグの方……


 魔物も当然フラグにはなるけど、これは存在が確かだからね。


 フラグが立ったらそれはもう諦める。魔物はしょうがない、フラグが立たなくても襲われる可能性は高いから。


 本来これも聞いてはいけないのだ。だってお前はどうやってこの辺境に来たんだってことになるから。


 でも、今のフランクでは案の定そこまで気が回らないようで


「出るには出るが、出てもホーンラビットぐらいだ」


 と答えてくれた。


 ? ホーンラビットぐらい? 俺の知ってるホーンラビットはそこそこ強いぞ?


「ホーンラビットでもフランク達では危ないだろう」


 と聞くと、返ってきた答えは


「ホーンラビットぐらいなら、倒せるから問題ない」


 という答えだった。


 え!倒せる? フランクのレベルは確か2だった、それに魔法も使えないし、戦闘系のスキルもなかったはず、????


 おれはレベル5に偽装してるけど、本来は違うし、そうでなくても魔法が使えるから遠距離から倒せるのでまだ理解できる。でもフランクは商人、今は護身用だろうナイフとショートソードの中間ぐらいの剣を持ってるけど、殆ど戦闘とは縁がないはず?


 何で? ホーンラビットが倒せるんだ?


 考えても答えは出なかったが、その後実際にホーンラビットが出たことで、全てが解決した。


 馬の休憩で馬車を止め、水を飲ませてる時に森ではないからと油断して、気配感知のスキルを使ってない時に、フランク目掛けてホーンラビットが飛び込んできた。


 走ってくる足音に気づいたフランクは既に剣を抜いていて、飛び込んできたホーンラビットを躱しながら、剣を振りぬき倒してしまった。


 確かにあれなら倒せると豪語してもおかしくない。だけどあのホーンラビットは動きが遅かった。病気かなんかで弱ってたのか? 気になったのでホーンラビットを鑑定してみた。


 全てに納得、何とそのホーンラビットは状態は死亡と出てたけど、病気だとは出ていなかった。以前森で蛇の魔物に襲われたホーンラビットを鑑定で見たことあったからわかる、死亡しても毒とかの状態は表示される。


 それはそうだよな、毒とか病気とか持ってるものを食べたら危険だもんな。表示されないなら鑑定の意味がない。


 健康なホーンラビットだったのに納得したのはレベルを見たから、何とレベルが1だった。俺が森で狩ってるホーンラビットはレベル3、俺のホーンラビットの認識がレベル3だったから、フランクの言葉に納得できなかった。


 導き出された答えは、同じ魔物でもあの森の中の魔物はレベルが高いということ、これじゃ認識にずれが出るのは仕方がない。


 確かにあの森は魔力が高いからな、雪の積もり方でさえ違うと言ってからな。


 それにしても油断し過ぎだった。森じゃないからと気配感知も使わないとは、反省しなくては、今回はフランクが上手く対処したからいいものの、一つ間違えたら怪我をしててもおかしくなかった。


 俺は人にばかり警戒し過ぎて、ちょっとおかしくなってる自分の感性に反省するのだった。


 倒したホーンラビットは今晩のおかずにすることにして、血抜きを済ませ、野営地で解体、料理することに。


 この頃にはフランクも落ち着いていて、その後は安全な速度で馬車を進めた。


 出発後、もう一度休憩をはさんだ後、暗くなる前に野営地を決め、食事をとり、交代で見張りをして休むことに。


 本当は結界を張ってるから、見張りの必要はないのだけど・・・・


 家の結界魔道具の簡易版を小さな魔石で作っておいて良かった。魔力満タンで半日ぐらい持つ。当然範囲も狭いけど。


 翌朝は日が昇るころ起き、簡単に食事をして領都に向かった。


 今日は、領都について聞いたり、フランクの家族について聞いたりしながら、順調に進んでいった。


 このまま行けば予定より早く着きそうだとフランクが教えてくれた。


 ちょっと不思議そうだ、それには理由がある実は昨夜俺が見張りの時に、光魔法でヒールを作っておいた。


 その習熟度を上げるため、休憩のたびに馬にヒールを掛けていたから、馬が疲れにくくなっていた。領都に着く前に少しでも光魔法の習熟度を上げておいて損はないからね。


 治療に光魔法は必要ないと思うけど、折角練習対象が身近にいる時にやらないと、この前のようにホーンラビットを捕まえなきゃいけないし、流石に何度もやるのは気が引けるから。


 結局、3時(15時、太陽の高さで判断)ごろには領都の外壁が見えてきた。


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