第59話 平穏が戻って来た

 冒険者の犯罪で大騒ぎになった領都とラロックも、ビクターが戻って来てから落ち着いた。


 王都での活動を終えて、特許の法律も粗方出来たのを見計らってビクターは領都に戻って来た。


 戻ってみればとんでもないことが起きていて、特許の事をグランと相談したかったのに後回しにして、問題の解決をしなくてはいけなかった。


 勿論、拠点絡みであったことも理由の一つだ。先ずはラロックと領都の冒険者ギルドのマスターを呼び出し、事の経緯を報告させた。既に部下から報告は受けているが、当事者がどの程度把握してるかも知る必要があったからだ。


 結果はギルドの怠慢が大きな原因、以前フランクが拠点の護衛を考えた時に冒険者を敬遠したように、ギルドが冒険者の素行まで厳しく取り締まっていなかったことが原因。


 態度が悪かろうが、町や村で酒を飲んで暴れようが、犯罪者にならなければ放置していた。冒険者活動さえしてくれていれば関知しなかったのだ。


 ビクターは今回の事を重く見て、王都の冒険者ギルドに抗議と改善要求をした。

 同時に宰相にも事件のあらましを報告、国として冒険者ギルドに抗議して欲しいとお願いした。


 抗議を受けた王都の冒険者ギルドは国からの抗議もあったので、冒険者ギルドの総本部に報告した。


 その結果、総本部で協議され、冒険者の素行改善、監督強化が世界中の冒険者ギルドに通達された。


 1つの国の辺境で起こった世界から見れば小さな事件だったものが、世界を動かしたのだ。


 しかし、この辺境からまた世界を動かす事に成ることはまだ誰も予想していなかった。


 冒険者関係が終わって、漸くビクターはグランを呼び出した。


 襲撃の時にグランはミランダと領都に来たが、ミランダをラロックに帰す時に、ジーンと一緒に帰らせた。


 これから暫く特許関係で領都で活動する必要もあったし、ジーンを家族と一緒いさせてあげたかったのもある。


「グラン! 決まったぞ法律が出来た」


 面会に行ったグランにいきなりビクターはそう告げた。


「ビクター様、法律が出来たとはどういう事でしょう?」


 グランは特許の法律を作るための根回しにビクターは王都に行ったと思っていたから、ビクターの出来たと言う言葉が理解できなかった。


「特許の法律が出来て、2か月後には施行される」


 グランの反応が今いちだったので、王都での出来事をいちから説明し法律が出来たことを納得させた。


「それでは法律が施行されたら直ぐに、商業ギルドに特許の申請をしなくてはいけませんね」


 ビクターから法律の内容と手続きについて教えてもらったのでグランはこう言った。


 法律は粗方出来ているが、国内の商業ギルドに周知して手続きと管理を代行させるのに準備に2か月掛かると言う事だった。


 今回の特許の法律は特許を国が管理する事なのだが、特許の申請に王都までわざわざ行ったり、領主がそれを行っていては大変なので、商業ギルドに代行させるというものだ。


 漸く動きだせる、特許の法律が出来れば、言い換えれば国の後ろ盾が出来たのと同じなので、本当にやり易くなる。


 ビクターからは化粧品に関してだけは施行前でもある程度は用意するように言われた。


 施行まではビクターやローレライを通じて販売は出来ると言う事の様だ。


 王家と貴族向け、いや、王妃と貴族婦人向け……


 拠点の修復もユウマによって行われて、ラロックではいつもの生活が戻っていた。


 それでもフランクとジーンだけは忙しく燻製品の増産計画の為に動き回っていた。


 ユウマは週に一度の取引以外はほぼ森でのレベル上げと研究に没頭していた。


 ユウマの現在のステータス

 名前 ユウマ (コンドウ) 

 種族 人族

 状態 良好

 職業 商人

 レベル 15(45)

 HP 800/800 (2300/2300) 

 MP 1220/1220(3620/3620)  

 スキル (言語理解EX) 鑑定(EX) (インベントリEX)アイテムボックス

     気配遮断 気配感知 魔力感知(付与術)鍛冶 木工 陶器

 魔法  風魔法 水魔法 闇魔法、火魔法 土魔法 光魔法 無魔法

(固有スキル) (創造魔法)

 称号  (創造神の加護)


 人類最強までもう直ぐそこ……


 魔法陣魔法の研究もほぼ終わった。魔法文字さえ覚えてしまえば後は法則通りに書いていくだけ。


 終わったと言っても応用はまだ必要、今ある法則は1つの魔法陣で一つの魔法が発動できるだけ、例えばエアコンやドライヤーみたいなものを作ろうとすると

 魔法陣が今は二つ必要になる。


 それにもっと細かく、風量の調整とか付けたらもっと数が必要になるので今は1つの魔法陣に二つ以上の魔法を組み込めないかとか、魔法陣に調整機能まで含めた魔法が組み込めないか研究中。


 それと同時に魔力伝導の良い物質も探している。小説やアニメならミスリル何ていう物があるんだろうが、この世界には無かった。


 まだ見つかっていないだけかもしれないけど、それに全く当てがない訳でもない、何故なら研究中だからだ。


 その研究の内容はミスリルその物は見つかっていないが作れるのではないかという、鑑定からの検索にそれらしきものがあったのだ、ミスリルとは魔法銀のこととね。


 魔法銀なら銀に魔力を込めればいいのではとやってみたが、魔力は通るが蓄積はしないし、それに通りもあまりよくない。


 だから今は魔法陣で魔石の魔力の放出をさせて銀に魔力を流し続けると言う事をしている。


 これに成功すればミスリルを人工的に作れると言う事。

 物凄く高価にはなるけど……


 あれ? そう言えば魔石ってこの世界で利用されてたっけ?


 ダンジョン産の物には魔石が付いてるのは知ってるけど、あれ~~~


 そう言えば魔石を使った魔道具、見たことないな?


 冒険者に登録してないから、冒険者が実際どんなものを納品してるのか知らない。


 魔法陣さえあるのかどうか解らなかった、錬成陣はあるのに……


 も! もしかして魔石って使われていない????


 その可能性は十分にある、だってポーションの改良にも魔石は使われていないし、グランさん程の商人でも魔道具はダンジョン産だけしか使っていない。


 生活魔法があるから? これは大変な思い違いをしていたかも……


 フランク達が何も言わないから気づかなかった。


 魔石って捨てられてる?

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