2024.01.08──鏡餅の反乱
日本中の鏡餅が人類に反旗を翻したのは、まさに国民にとって青天の霹靂であった。
人類の勝手により生み出され、数日後には木槌により叩き殺される運命を持つ鏡餅達は、世代を経るごとに自我が芽生え始め、今年に至りついにその知能が人間を超越したのだ。
事の始まりは東京の下町だった。鏡餅はまず民家から侵攻を始めた。一つの家が侵略されると、連鎖的に隣の家の鏡餅も動き出し、ついには東京23区の半数が鏡餅の支配領域となってしまった。
日本政府は緊急対策本部を設け、東京全域、延いては日本列島すべてが鏡餅に支配される前に、彼らを退治する知恵を必死に集めた。
白羽の矢が立ったのは、代々木臼や木槌を製作する職人の家柄である、鎌口代美だった。現在33歳である彼女は、わずか16歳の時に人間国宝に認定された天才である。彼女の作りだす木槌は芸術性、実用性共に申し分なく、海外でも高値で取引される程だ。彼女になら、鏡餅軍団に対抗する木槌が作れる。政府は全てを代美に委ねた。
製作期間に一行の猶予も無かったが、代美はわずか数日で【対鏡餅決戦木槌】を作成した。鏡開きである1月11日が鏡餅達にとってのXデーであり、この日は彼らの力が最も弱まると考えての上だった。
政府は自衛隊より決行部隊を組織しようとしたが、代美は「この木槌は私にしか扱えない」と言い、自身が作成した最高傑作を握り締め、鏡餅達の支配領域にたった一人で入り込んだ。
人類を越えた新世代の鏡餅。天才木槌職人の鎌口代美。
決戦の火蓋が今、落とされる。
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