2024.09.21──イタラナイタダキイレブン
某所に、一代で周辺諸国を統制し、巨大な都市国家を築き上げた名君が存在した。
名君の輝かしい記録はその国だけに留まらず、古今東西のあらゆる国にまで知れ渡り、幾年月も人々の間で語り継がれている。
しかし、その名君の跡継ぎは何者か? という質問を人々に投げ掛けると、解答を返せる人は極わずかだ。
二代目は暗愚というわけではなく、暴政で市民を苦しめたわけでもない。初代が築き上げた巨大な国家を、彼なりに上手く統治を続けていた。
だが、初代の才能と功績には遠く及ばず、人々は事ある毎に彼と初代とを比べ、巨大なスケールによって測られた彼は過小な評価を受け続けた。
そして終には、初代と共に国家を築いた譜代の家臣たちに政権を奪われ、ただ独りで国家を追い出されてしまった。
彼のことをまったく期待していなかった人々は、誰も彼を追ったり呼び止めたりはせず、やがて彼の記録は薄れて消えていった。
十数年後、都市国家は他国と貿易による強固なネットワークを作り上げ、世界は国と国とが支えあう安定期に差し掛かり、大きな戦争も起きなくなっていた。
そんな最中、どこの国家にも属さない、独立武装勢力が現れた。
その勢力は移動式の巨大な要塞建築に乗り込んで各国を転々と回っているらしく、乗組員の人種は多種多様で、襲撃されたある国家からの情報によると、乗組員の中にはかつて自分たちの国から追放された人物が混じっていたとのことだった。
襲撃頻度が多くなったことで、都市国家は対策本部を作り上げた。そして、その期を見計らったかのように、独立勢力からの声明が国家に届いた。
独立勢力を築き上げたのは、都市国家から追い出されたあの二代目であった。
二代目を代表に、彼を支える幹部が十名。国王や将軍の跡継ぎが多く、中には機械工や音楽家も存在した。
いずれも偉大な先代の影響が仇で身を落とした者たちで、彼らは自分たちをイタラナイタダキイレブンと称した。
彼らが至れなかった頂たる初代達は、もうほとんどが残っていない。しかし彼らは自分達が出来損ないの跡継ぎではなく、偉大な初代になるために、安定化した巨大で平和な世界に戦いを仕掛けるのである。
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