2024.11.23──食べかけのギフト㉓

 不意を突かれた人影は猛烈な抵抗を見せたが、清戯と磯辺が両脇から押さえつけ、さらに節が手首に手錠を掛けたことで、あっという間に鎮圧された。

 節が持参した懐中電灯で下手人を照らすと、男性らしきその人物は目立たない黒っぽい服を着て、そして顔を布でグルグルに覆っていた。

 節がその布に手を掛けると男は激しく身震いを起こしたが、清戯と磯辺に押さえられた状態で抵抗叶わず、顔の布がパラリと落ちた。

「っ! なに……これ?」

 露わになった男の顔を一瞥した節は、思わず手で口を覆った。

 男の顔は鼻から上は正常であったが、頬や顎の部分が異様なほどに膨れ上がっていた。輪郭だけを見れば、まるで洋梨のような形をしている。顔を見られた男は、力なくその場で項垂れた。

 その時、朝木家の裏口の電灯が点いた。続いて慌ただしい足音と共に、朝木和彌と穂香が飛び出してきた。「いったい何事ですか!?」

「──っ!!」

 捕らえられた男を見るなり、顔を青ざめて絶句したのは穂香だった。

「お知り合いですか?」と節が尋ねると「俺が代わりにお答えしましょう」と清戯がしゃしゃり出た。

「この御仁の名前は岸柿きしがき盛薫もりしげ……穂香さん、あなたのお兄様ですね?」

「えっ!?」

 清戯の発言に場が騒然となった。特に驚いたのは和彌である。

「お義兄さん!? なぜここに……そして、その顔は……」

 驚愕する和彌の横で穂香は何も喋らず、ガチガチと身体を震わせている。

 すると、ずっと沈黙を保っていた男が唸るような声を上げた。

「あぁ、そうだ! 俺は岸柿盛薫……そこに居る朝木穂香の兄さ」

 その男……盛薫は、清戯を睨みつけるように顔を上げる。

「実の兄が、実の妹の家に来るのがそんなにおかしいのか? 確かに変な時間だがな。少なくとも、こうして顔を晒されて手錠まで付けられる謂れはないはずだ」

「詳しいことは、もう少し落ち着いて話のできる場所でしよう。キミが一生懸命掘り出したの件も含めてね」

 そう言って清戯が指さす先には、先程の騒動で盛薫が地面に取り落としたものがあった。それを一目見た磯辺が「え!?」と声を上げた。

 それは朝木氏の部屋から見つけ出した、あのノートだった。

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