2024.11.22──食べかけのギフト㉒
そしてその夜12時。探偵たちは厳かに朝木家の近くに集結した。
節、磯辺の二人は目立たないよう真っ黒なコートを身に纏い、出来るだけ建物や木の陰に隠れるように移動してきた。清戯はもちろんいつもの黒衣である。テーマソングも流さず、予定通り助手を返して一人でやってきた。
三人は合流すると、家の様子が一望できるポイントを見つけ、そこに潜伏して状況が動くのを待つことにした。
朝木家の電灯はすっかり消えていて、住民全員が寝静まっていることだろう。
「希稲ちゃんが言われた通りやってくれたなら、おそらく今夜にでも目的の人物は来るはずだ」
清戯が少しだけ身を乗り出して言った。節が眉をひそめて清戯を見る。
「あの子に何かやらしたわけ? 助手はメンバーから外したくせに……」
「相手が俺の思っている人物なら、希稲ちゃんに危害を加えることはないだろう」視線を前に向けたまま清戯が返す。「そんなことをすれば、あらゆる意味でさらに自分を追い込むことになるからな」
会話がそこで止まったまま、三十分、一時間、そして二時間が経った。磯辺が欠伸の出そうになった口を押さえ、節が目を強く擦った。その時であった。
深夜の暗闇の空間の奥から、さらに黒い塊がヌッと現出した。
それを見た節と磯辺が反射的に動きそうになったのを、清戯が手を伸ばして止める。「まだだ」
黒い塊は黒い人影となり、朝木家の方へ慎重に、しかし素早い動きで接近する。正面玄関の前まで来たところで一度立ち止まり、キョロキョロと辺りを確認するように顔を動かす。何か被り物をしているのか、頭部が不自然に膨らんでいるように見える。
不意に、人影は正面玄関を横に逸れ、家の脇を素早く歩き出した。
「裏口に回るつもりだ」
清戯がそう言いながら音も立てずに移動を始め、節と清戯もその後を追う。
人影は清戯の予想通り、裏口のところで立ち止まった。清戯たちも近くの物陰に隠れ、観察を続ける。
人影は家には入ろうとせず、周囲の地面を足の爪先で何度も蹴っているようだ。
ある地点を蹴った瞬間、人影の動きがピタリと止まった。そして今一度周囲を確認すると、懐からスコップのようなものを取り出し、一心不乱に土を掘り出した。
清戯が節と磯辺に目配せし、二人は頷いてその場から動き出し、人影の方にゆっくり近づき始めた。清戯も二人の反対方向から人影への接近を試みる。人影は土を掘るのに夢中で、清戯たちの存在に気付いていない。
そして、三人の追跡者の距離が十分に縮まったタイミングで、人影が地面から何かを取り出し、頭上に高々と掲げた。
「あった! これだ!」
その言葉を合図のように、清戯たちは人影へ飛びついた。
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