2024.07.13──落涙
私の家は海岸近くにあり、休みの日は砂浜まで赴いてビーチコーミングを行うのが習慣となっている。
ここらの砂浜は海からの漂着物が多く、見た目はそこまで綺麗とは言えず、サマーシーズンでも観光客はほとんど来ない。しかし、私にとってはなんとも都合のよい遊び場なのである。
私が主に集めているものはシーグラスという、ガラスの破片が波の力によって年月を掛けて研磨されたものだ。その表面は磨りガラスのような見た目をしていて、角は丸く手触りもよい。身近で手に入るお手頃な宝石、といったところだ。
その日は雨が降っていた。私はいつものように砂浜に降り、傘を差しながら視線を下にシーグラスを探していた。
その日は、いつになく質のよいシーグラスが多く見つかった。どれも大粒で、形もよい。私はそれらを持参したビニール袋に詰めながら、更なる大物を求めて浜をどんどんと歩いていった。
そんな私の目が、異様なものを捉えた。砂浜に落ちた、黒く、平らで、ブヨブヨしたもの。私は視線を上げて、その正体を見た。
それは、砂浜に打ち上げられた、巨大な鯨の死体であった。私が最初に見つけたのはその鯨のヒレである。
身体にフジツボなどの小さな海洋生物が付着した、おそらくかなり高齢の個体だと思われた。寿命が尽きたあとにここまで流されたのか、それとも不幸な事故によるものか、そこまでの判断はつかなかった。
私はすぐに然るべき機関に連絡を入れ、鯨はその日の内に何処かへと運ばれていった。
私は家に戻って、今日拾ったシーグラスを水で洗った。いずれも淡い青色をしたガラスで、その形は雫のようであった。
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