Apr.

2024.04.08──赤達磨祭り

 地元の祭りが嫌いだった。

 赤達磨祭りという、地元の名産品でもある達磨を祀るための祭事なのだが、僕はこの地元の達磨をあまり好きにはなれなかった。

 普通、達磨というものは、赤く丸い身体に肌色(あるいは白?)の顔が付いているものだが、地元で作られているものはどういうわけか、顔まで真っ赤に塗られた達磨で、さらには目も口も鼻も眉も描かないものだから、どこに顔があるのだかわかりゃしない、ただの真っ赤な丸い物体なのだ。

 これが「赤達磨」と呼ばれる所以で、どんなご利益があるのかは知らない。名産品と謳うくらいだからそれなりの知名度はあるそうだが、とにかく、赤達磨祭りでは、大小様々な赤達磨を街の大通りにズラリと並べ、達磨の合間合間には様々な露店が開かれる。この露店も変な店が多く、林檎飴を魔改造したであろう達磨飴、スーパーボール大の達磨が水に浮かべられた達磨掬いなど、枚挙に暇がない。

 子供の頃はずっとこの祭りを不気味だと思っていたし、大人になってからも、名産品に依存しているような姿勢が好きになれなかった。

 しかし、地元の過疎化により、近年この赤達磨祭りの規模は急速に縮小していった。

 そしてコロナ禍の煽りも受け、我が地元は隣町に合体吸収されることとなり、赤達磨祭りは開催されなくなった。今、祭りの時期に地元に帰っても、あれ程主張の激しかった赤い達磨は、一つも置かれていない。

 悲しいという気持ちはなく、寂しさがるわけでもないのだが、あの不気味な光景をもう見ないのだと思うと、僕は何とも言えない違和感を覚えるのだ。

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