2024.03.28──スポンジ道路

 その日から世界中のアスファルト道路が突如としてスポンジのように柔らかい材質となった。

 まず、重い車はどんどん道路に沈んでいってしまうので、走行が不可能になった。トラックやバスはもちろん、乗用車もだ。

 バイクは進めないこともないが、それでも道路に埋まった状態で走ることになるため、まったくスピードが出ない。人々はバイクも乗り捨て、それに伴いガソリンスタンドの需要も落ち、あちこちの店が潰れた。

 人々は主に徒歩か、自転車で移動するようになった。自転車に乗れる人物も子供か、体重の低い者に限られるため、普段運動をしない太り気味の人間は汗をかきながら柔らかい道路をボスボスと歩く羽目になった。スポンジ化現象が起きてから一年で世界中のメタボリックシンドロームの問題が解消されたという論文も発表されたが、真の運動嫌いは家に籠りっぱなしとなり、外で人目に付かなくなったという考えもある。

 しかし人類は交通を諦めてはいなかった。スポンジ化現象から二年が経つと、「ボール車」という球状の乗り物が開発された。これは道路を転がって移動するのではなく、スポンジ化した道路の弾力を利用して「跳ねて」進むことが出来る車だ。

 このアプローチは成功を納め、人々は丸い車に乗り込んで再び道路を高速で移動することが出来るようになった。お盆などの期間になると、何台ものボール車が高速道路をピョンピョンと跳び跳ねる姿が見られ、昨今の風物詩となっている。

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