2024.11.02──食べかけのギフト②

 予想外の梱包物に清戯も最初は呆気に取られたが、気を取り直してその果実の観察を始めた。まさかただの生ゴミを、他人に押し付けるためにこのような手の込んだことはすまい。

 見た目はリンゴの芯のようであるが、皮は薄紫色で、匂いを嗅ぐと柑橘系の爽やかな香りがする。清戯は仕事柄、日常の様々な物品をすぐに記憶の棚から取り出すことが出来るが、この果実から得られた情報のみでは、パッと思い浮かぶものは何も出てこなかった。つまりは、一般的に使用されている果実ではないということだ。

 そうなると、図鑑やネットを使用して詳しく調べる必要が出てくる。この食べかけの芯の状態ではっきりとした答えが出せるかは不明だが、大まかな種類だけでも分かれば、生産地、あるいは生息地を調べる足掛かりになるかもしれない。

 そういえばだ。この果実はいったいどこから送られてきたのだろう。封筒の表面には住所が記されているが、聞いたこともない遠方の地名だ。

 そしてこれが自分の元に送られてきた理由はなんだ? この食べかけの芯を自分に送ることで、何かしらの謎を解明して欲しいというのか?

 清戯の興味は益々高まった。これは本腰を入れて調査をしなくてはなるまい。あるいは「助手」を伴っての遠征も必要になるかもしれないが……彼女は学生だ。都合を付ける必要がある。

 清戯は身だしなみを整えると、必要な物資や人員を揃えるべく、事務所を軽快な足取りで飛び出して行った。

 しかし、この時、送られてきた果実を事務所に置きっぱなしにしたことを、清戯は後悔することになる。

 準備を整えた清戯が戻ると、何者かによって事務所が荒らされ、果実が消えていたからだ。

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