2024.11.03──食べかけのギフト③
警視庁捜査一課の
自分の功績が認められ、その力を借りたいと言われるのは良い。一人の警察官としての誉れであり、働き甲斐もあるというものだ。
だがこうも、今日初めて耳にした辺境の土地にわざわざ遠征して向かうというは、さすがに骨身に堪えるし正直言って面倒だ。別に都内の仕事が暇というわけでもなく、こうやって不在にしている間にも仕事は溜まっていく一方だろうし、早く帰りたいのに帰りたくないという、訳の分からない矛盾を抱えることになる。
「……県警の方でなんとかならなかったんですかねぇ、カイさん」
真向かいに座る部下の
「セツさん、と呼べって言ってるでしょ……カイさんだとなんか男っぽいし、響きが『解散』みたいで嫌なのよ……なんだったら『せっちゃん』と呼びなさい」
「いやそれはさすがに……」
「県の方でどうにもならなかったから私たちが行くのよ」
足元に置いている紅茶のペットボトルを持ち上げながら節が言った。
「自分達が楽したいからって、本庁の人間を呼ぶような奴は居ない。自力解決したり隠蔽したりするよりも、ずっと面倒くさいんだからね」
「隠蔽なんて……!」磯辺が周りを見回す。「縁起でもないこと言わないでくださいよカ……セツさん」
「だから今回の件は正当な救援要請ってコト」節はペットボトルに残った紅茶を飲み干した。「文句言う暇あるなら、この後の仕事の段取りでも考えてなさい。まだまだ時間はたっぷりあるわ」
それ以上は磯辺も何も言わず、節は再び外の景色に視線を移した。
節は、これから始まる仕事の面倒くささとは別に、もう一つの嫌な予感を抱えていた。
田舎町に暮らす旧家の金持ちの謎の死……。
如何にも「奴」が好みそうな事件だ。
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