2024.11.20──食べかけのギフト⑳

「……どう思います?」

「どうとも言えないわね」

 穂香への聴取を終えた節と磯辺は、そんな会話をしながら調査本部の方へと向かっていた。節は肩をすくめながら続ける。

「あの話が全部事実なのだとしたら確かに重要な情報でしょうね。でもあまりにも信憑性が無さすぎる」

「朝木穂香は嘘を言ってると?」

「それはこれから精査したら分かることだけど、朝木氏の遺体を見つけた当日のことはいいとして、ハウスが燃えた時のことはあまりにも眉唾ね。ハウスを見張ってた警官は放火を見落とす大ポカを犯したけれど、現場からあからさまに逃げ出そうとしている人間を見逃すとは、さすがに思えないわ。第一、その時に意識が回復してたなら、その場の警察や旦那に言えばいいのに、なぜ今になって私たちに伝えるの?」

「その時は重要なことだと思っていなかったのでは?」

「既に義父が殺され緊迫した状況だったのに? 私はこう考えるわ、彼女は寝込んでいる間に先の供述を組み立て、今日になってようやく発表できた、とね」

 節はそう断言した。磯辺は辺りをチラッと見まわしてから、小声で節に話しかける。

「……セツさんは、朝木穂香を犯人だと思ってますか?」

「そうとは言ってない。だけど……彼女が何かを隠していることは確かでしょう」

 節は先ほど聴取したメモを取り出して、パラパラと捲った。

「自分を守るためか、あるいは誰かを庇うためか……とにかく、私たちに一刻も早くこの町を立ち去ってほしいという気持ちがあることは、間違いなさそうね」

「まあ、それは俺も感じましたが……おや?」

 磯辺が前方に何かを見つけ、節もそちらに視線を向けると、前から二人の人間が歩いてきていた。

 それは清戯と助手の少女だった。清戯の方も節に気付き、声を掛けた。

「おや、せっちゃん。こんなところに居たとは」

「こっちのセリフよ。希稲ちゃんと遊んでたんじゃないの?」

「いや、ちょっと調査本部の方で調べることがあってね」

「調査本部で?」

「ああ、とても重要な……あっ、忘れてた」

 そう言うなり清戯は指を鳴らし、助手がベースの弦に手を掛けようとしたため、節はその手を引っ掴んで止めた。

らんでいい!」

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