2024.11.18──食べかけのギフト⑱
希稲が歩くルートはどんどん町から離れていき、ついにはちょっとした山道を上り始めた。
重いベースを背負いながら歩く助手はぜぇ、ぜぇと息を切らしてきたが、清戯は顔に汗一つかかず平然と歩いている。
清戯の思考は、今そこには居ない。昨日から、いや封筒が事務所に送られてきた日から今日までの出来事を頭の中で整理しているのだ。
朝木氏が殺されたにも関わらず、氏が送る予定だった封筒が届いた理由は判明した。後で話したら節は拍子抜けすることだろう。残す問題は、朝木氏が誰に殺されたか? 何故殺されたか? ハウスが燃えたのは何故か? ハウスでは何を育てていたのか? そして何より、あの食べかけの果物の正体は?
この内のいくつかは、信頼なる名刑事の活躍もあって、ある程度の目星はついている。だが事件解決に至るには証拠が不足だ。もう少し、決定的な何かを掴む必要がある。朝木穂香が目覚めたというが、彼女はこの状況を打破してくれる情報をくれるだろうか? 節はその情報を聞き出せるだろうか? やはり、このファンガールとの冒険が終わり次第、自分たちも朝木家に向かう必要があるか。
そこで、前を歩く希稲の足が止まった。彼女は振り返り、「ここはひみつのばしょ!」と笑顔を向けた。
なるほど、そこは木の少ない開けた土地であり、子供が秘密基地として使うにはもってこいの遊び場であった。地面には希稲が持ち込んだであろう玩具などが所々置かれ、近くの太く低い木には、簡易的なブランコが吊るされている。
「素敵な場所だね希稲ちゃん。このブランコはお父さんが作ってくれたのかな? それともお祖父ちゃんかな?」
ブランコのロープを手で掴みながら清戯が尋ねると、希稲はブンブンと首を振った。
「ううん。おじちゃんだよ!」
「……おじちゃん?」
清戯がそうやって言葉を反復した、その時。
「────!」
清戯の頭にある考えが飛来した。清戯はブランコが吊るされた木を見上げ、そして次の瞬間には木から離れ早足で歩きだしていた。
「助手! すぐに向かう場所がある! 急ごう!」
やっとこさ休憩できると思っていた助手は、面食らった様子で清戯の後を慌てて追いかけた。
「た、たんていさん! どこいくの!?」
「すまない、ちょっと用事を思い出してね! 事が済んだら思う存分……そうだ」
清戯が急に立ち止まったため、がむしゃらに追いかけていた助手が清戯の背中で鼻を打った。
助手が顔を抑えて悶えているのを気に留めず、清戯は希稲に近づいて、肩に手を置いた。
「キミにも一つ、お願いしたいことがあるんだが……いいかな?」
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