2024.11.17──食べかけのギフト⑰

 希稲に付き従う形で、清戯と助手は果之浦町の美しい田舎道を進んでいく。

 道中、希稲は清戯に探偵の仕事のこと、今まで起きた事件のことについて質問攻めし、清戯もそれに快く応じた。自身がそういう人間であるためか、清戯は好奇心の多い子供が大好きだ。特にこうして、自分の仕事に興味を持ってくれる子供だとなおさらのことである。

 もちろん、ただただ子供の質問に答えてやっているばかりではない。清戯は仕事中なのだ。それとなく、希稲の質問がわずかに止まった隙を狙って、清戯の方からも質問をぶつけてみる。

「ところで、キミのおじ……いや、キミのお家のビニールハウスが燃えちゃった前の日に、何か変わったことはなかったかい?」

「んーん。なにも。いつもどおりだったよ」

 希稲がブンブンと首を振って答えた。清戯がふむ、と手を口に当てる。

「それでじゃあ、キミのおじいさんが元気だった頃、誰かと喧嘩をしていたりとか、そんなことはなかったかな?」

「わかんない」

 希稲がブンブンと首を振り、清戯は助手の方を見て苦笑した。

「あ! おじいちゃんはね! おてがみだそうとしてた!」

 手紙の話題が出たため、清戯は「おっ」と視線を希稲の方に戻した。

「おじいちゃんが何を書いていたのかは知っているかな?」

「しらなーい! でもおじいちゃんのへやにおてがみいれるふくろがあったよ!」

 希稲は満面の笑みを浮かべた。

「だからわたしがポストにいれてあげたんだ!」

 それを聞いた清戯は目を丸くし、やがてあっはっはっはっは! と笑い出した。

「そうか、そうかぁ! あの封筒を送ってくれたのはキミだったのか!」

 清戯は懐から白い大型の封筒を取り出し、それを見た希稲が目を輝かせた。

「誇りに思いたまえ朝木希稲! この難事件に名探偵・黒曜清戯を呼び出したのは、まさしくキミだということを!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る