2024.09.30──オクトボール・ショッピング

 かつて大型複合ショッピングモールであった廃墟に足を踏み入れると、全自動タコ焼き製造機が今でも元気に作動しているのが見えた。

 まさかタコ焼きの材料があるのか? 俺は空腹を抱えていたこともあり、意気揚々とそのタコ焼き屋の前に駆け寄り、そしてすぐにガッカリした。

 タコ焼きの材料は、やはり数十年前に尽きてしまったようで、タコ焼きの前に転がっていたものは、近くにあるセラミックやプラスチックの廃材を無理やり丸めて作った、スクラップばかりであった。

 頭に鉢巻を巻いた、人を模したタコ焼き製造機は、材料など気にしないといった風情で、凹みのある鉄板の上でプラスチックをドロドロに溶かし、それを慣れた手つきでクルクルと丸めて新しいスクラップを作り続けている。プラスチックの溶けた悪臭が鼻につき、俺は顔を覆いたくなったが、店主の手前それは我慢した。

 タコ焼き屋のテーブルの上には、茶色く溶けたプラスチックに、キラキラと光る緑のセラミックが振りかけられたものが置かれている。俺はそれを手に取り、ポケットにもう何年も突っ込み放しだった紙幣をテーブルに置いた。

「釣りは要らないよ」

 俺はそう告げて、タコ焼き屋の店主に背を向けた。

『料金不足』

「は?」

『食逃滅却モードに移行。排除。排除。排除』

 タコ焼き屋製造機は慣れた手つきでテーブルの下に収納していた銃器を取り出し、俺に向かって発砲した。

 やはりこの時代の廃墟は物価が高すぎる。俺は懐に丸いスクラップを抱え、タコ焼き製造機に追われながらショッピングモールを全力で駆けた。

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