2024.05.16──急な来客
ある朝起きたとき、我が家の屋根に一本の矢が刺さっていた。
朝のニュースを見ていると、家から10キロ離れた先にある山の祠が破壊され、巨大な足跡が点々と続いていると大きく報道されている。
「きっとあれは白羽の矢ってやつだ。この怪物……いや、神様は家に来るぞ」
祖父が神妙な顔付きでそう言い、家族に緊張が走る。
今すぐ逃げようという意見も上がったが、それよりも、逆に訪れてくる神様を出来る限り丁寧にお迎えするということで話がまとまった。神様の機嫌を取り、なるべく穏便に事を済ませてもらうのが狙いだ。
程なくして、その神様は我が家の前までやってきた。背は10メートル以上はあり、全身が真っ白な毛で覆われている。毛の隙間から両目と鼻が僅かに窺え、真っ白な紙の上に黒い点が均等に三つ打たれているようだ。実に神様らしいというべきか、ミステリアスかつ、荘厳な雰囲気を醸し出している。
我が家の方では神様を迎える準備をすっかり済ましている。全員が一張羅に着替え、完璧に掃除をし、神様に飲み食いしていただくための料理や酒も用意してある。父が代表として、神様に頭を下げ、歓迎の意を示した。
すると、神様は困ったように顔をしかめた。全員に緊張が走る。神様は毛で隠れていたその大きな口を、グググッとゆっくり開けた。
【いや、その……私は弓の練習中に間違って飛ばしてしまった矢を回収に来ただけなのだが……】
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