2024.07.11──駅舎より見つかった回顧録
憧れ鉄道、小説駅。
ここに降りてから、ちょうど明日で十年を過ぎるであろうか。思えば随分と長い間、ここに居座り続けているものだ。
憧れ鉄道に乗車して最初に降りた駅は確か、考古学駅だったか。初めて降りる駅にしては随分と渋すぎた気がするし、その駅には親の手を握って列車から降りたこともあり、あまり長居はしなかった。だが、駅の景色は今でも思い出せるくらい、当時の私には輝いて見えた。
次に降車したのが、プロ野球駅だった。ここも親と共に降りた駅だったが、私もいくらか考える能力が身に付いた頃だったため、その駅に滞在することに熱中していた。途中何本かの列車が来ても、乗ろうとも思わなかった。
しかしかの駅には人数制限があり、またそこに居続けるにはそれ相応の資格が必要であった。私には資格が足りず、と言うよりは、資格を得るための努力が足りずに、結局はフラフラと、たまたま駅に止まった行き先の分からない列車へ、逃げるように乗り込んでしまった。その列車以降、私は一人で旅を始めた。
たまたま乗り合わせたその列車から、私は中々降りることが出来なかった。時折、漫画駅、エンジニア駅と魅力的な駅にも停車したのだが、そこに足を踏み入れるも、列車が発車する前に座席に戻り、結局は旅を続けてしまうのだ。
そしてさらに列車に揺られ続け、私がついに降車したのが、この小説家駅であった。
一度その外観だけ目にした漫画駅と似ている雰囲気があったが、旅に疲れていた私には、この場所が妙に心地よく感じた。だが諦めやすい自分のこと、この駅も近い内に離れるのではないかという考えも常に持っていた。
実際、何度か駅に止まる列車に乗り込んだことはあった。絵本駅やデザイナー駅にふらっと立ち寄ったりもしたが、それでも気が付けば、私は小説駅に戻っているのである。
今年で十年。さらに二十、三十とここに居続けるのか、またしてもふらりと別の駅に赴いて、そこで新たな居場所を見つけるのか、今の時点では分からない。
だが、どの駅に留まろうと、ホームと呼べるべき場所はここだけだろうと、最近になって私は思うのである。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます