2024.01.31──森の術中
脳外科手術を受けていたはずの私は気が付くと緑の深い森の中にポツンと立っていた。
これは麻酔によって私が見ている夢なのか、それとも手術が失敗してあの世に来てしまったのか、何とか現状を把握しようと周囲を見渡すと、近くの苔むした地面がモコモコと盛り上がり、そこから耳が三本生えたウサギが現れた。
「そんなことを考えたって仕方ないじゃないか」
ウサギは地面から顔だけを出しながら、私を見下すように言った。腹が立った私はそのウサギの頭を思いきり蹴飛ばしてやった。
その勢いで地面からウサギの身体が飛び出すかと思ったら、地面から出てきたのは足が二本しかない巨大なムカデだった。ウサギはそのムカデに咥えられていたようで、私に蹴られたことでムカデの口から無事に脱出し、森の奥に逃げていった。
そして今度は私が逃げる番だ。ムカデは私に向かって突進してくる。私は悲鳴を上げながらウサギの逃げた方向へ駆け出した。
私の悲鳴が森に響くと、木の影から目玉が五個あるフクロウが数匹顔を出した。
「ネズミがただいま半額セール」
「カブトムシもセットでお得」
「猟師を呼べば次回はタダ」
フクロウ達はそんなことを宣いながら私の行く先に次々と現れていく。頭にきた私はそこに堕ちている石をフクロウにぶん投げてやった。
石は見事フクロウに命中し、落下したフクロウは私の懐に収まった。フクロウは「レジ袋は要りますか」と告げるとそのまま気を失ってしまった。
私がフクロウを仕留めるの目撃したせいか、ムカデは急に怖じ気づいて私を追うのをやめ、再び地面へ潜っていった。
窮地を脱した私は、フクロウを近くの木の根本に置いて、とりあえずさっきの生意気なウサギを探しに行くかと森の探索を始めた。
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