Feb.
2024.02.01──アイアイ
幼い時に航空事故で身体を失ったわたしは、それから10年以上を機械の身体で過ごしている。
今日は15歳の誕生日。人生で2回目のオーバーホールの日だ。
顔から順番に、胴体、腕、脚と15歳に相応しいパーツへと交換する。わたしは脳と内蔵の半分以外が全て機械なので、この作業には一週間もかかる。
新しい身体の見た目は、わたしが「人として15年間を生きていた場合」をAIによって分析し、形作られる。試作は多くて10パターン程あり、オーバーホールの前にその中から選択するのだが、わたしにはどれもこれも、それが自分の姿になるというイメージが沸かない。
AIが導き出す姿は、人間が理想的な生活をこなした上でのものだから、どれもこれも小綺麗なものとなる。わたしはこんなどこに出しても恥ずかしくない姿に相応しい生活を送れているとは思えない。クラスの成績も下から数えた方が早いし、部活動にも通ってない。ただ機械の身体を持っているだけの、自堕落な女だ。
しかし、肉体があった頃の写真は4歳の時のが最後だし、成長した姿に一番近いであろう肉親も居ない。最終的にはAIの選んでくれた似合わない洋服に袖を通す他ないのだ。
わたしのような全身機械の人間は、この世界に30人くらいしか居ないという。身近には全身はおろか片腕すらも失っていない人間ばかりだ。
もしその30人の内の一人に会うことができたら、どういう話をしてみようかな。あなたは本当の自分の姿を覚えている? 自分のヒントになる家族は居る? 今着ている服は好きで着ている?
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