2024.02.02──飼い主入門
猫が飼いてぇ。一人暮らしの孤独に耐えきれなくなった法師貝莉乃の導き出した答えがそれだ。
思い立てば吉日と、次の土曜日に莉乃は近所のショッピングモールにあるペットショップを目指して家を飛び出した。
だが莉乃はショッピングモールに入ってものの20分で即迷子になった。根っからの方向音痴に加え、普段はペットショップになど立ち寄ったこともないため、店の場所をちゃんと把握していなかったのだ。
どうしたもんかと適当に入った適当な店で適当に買った適当なドリンクを飲みながら考えていると、視界の隅にあるものが映った。それは壁一面がショーウィンドウになっている店で、ガラスを隔てた先はいくつかの部屋に別れており、その一つ一つに生物らしきものが入れられている。
まさしくペットショップ然とした店構えなのだが、気になるのはショーウィンドウの先に居る生き物達だ。まず目当ての猫が居ない。そして犬も居ない。モルモットやウサギも居ないし、カメやトカゲのような爬虫類も居ない。
じゃあ何が居るかといえば、見たこともない黒くてモジャモジャで光沢のある謎の生物がショーウィンドウの向こうからこちらを見つめている。顔には目玉が一つしかなく、口や耳らしき部位はパッと見で分からない。
しかしジッと眺めていると、これはこれで愛嬌があるかもと莉乃は思った。元々寂しさを埋める目的でペットショップに赴いたわけで、それを埋めてくれるのなら猫だろうが変な生き物だろうが関係ない。
莉乃は一つ目の生き物を購入した。安くはなかったが、損をした気分はない。同じ店で購入したペット用の鞄にその子を入れ、家路へと向かう。名前は買う前から既に決めている。莉乃はあたらしい家族に笑い掛け、その名を言った。
エマニエル。
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