2024.08.22──その日
押入れの掃除をしている時に、古ぼけたノートが出てきた。表紙には昔放送されていたアニメのキャラクターが描かれており、大きく「日記帳」と書かれている。多分、俺が小学校一~三年の頃に使っていたものだ。
今でこそ日記はおろか、紙にペンでメモを取ることすらやらなくなったが、当時はほぼ毎日しっかりと日記を書いたものだ。俺は日記帳に被った埃を払い、ページを捲りだした。
字は拙いが、当時あったことを割かし真面目に記してある。忘れかけていた記憶も、日記の文章を読んで段々と思い出していくようだ。この日記は捨てられないなと思いつつ、次のページを捲った。
『○年○月○日 シカミさんが来た。』
その一文を読んだ時、俺の手は止まった。
シカミさん。シカミ。その名前を思い出そうとするが、まったく頭の中に顔が浮かんでこない。親戚の誰かか? 親の友達か、仕事仲間か? すくなくとも当時の自分の友人には、シカミという奴は居なかったはずだ。
そして、他のページには一日の内容が事細かに書かれていたにも関わらず、そのページには上記の一文しか記されていない。次の日からも、他のページ同様に普通の内容の日記が続いている。
この日、俺の身に何かが起きた。日記に記す程の出来事だったはずなのに、どうしても思い出せない何かが。
これは、随分と面白いパズルを見つけた。明日にでも当時住んでいた所に赴いて、この日のことに付いて調査してみよう。
俺は日記帳を鞄に仕舞い、掃除を再開することなく床に付いた。心は、過去の自分から出題されたこの問題を解決する気概に満ちていた。
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