2024.09.28──生姿鉢

 馴染みの園芸店に訪れたら、生姿鉢が一つだけ売られていた。

 値は張ったが、まだ若く体色も良い個体だったため、その日買う予定だった花の種は置いといて、その生姿鉢を購入した。

 家に持ち帰り、机の上に置くと、生姿鉢は四脚で元気に走り回った。角のような耳をピコピコと動かしては、しきりに円形で真っ平らなその顔をこちらに向けてくる。

 これだけでも彼を家に迎えた甲斐はあったものだが、本来は鉢である。やはりこのまま何も植えずに室内飼いというのは少々寂しいものだ。何か、程よい植物で着飾ってやった方が、生姿鉢も喜んでくれることだろう。

 生姿鉢は背中に三つの凹みがあって、そこに土を入れられるのだが、いずれもそこまでの深さはない。広く根を張らず、あまり高く成長しない植物が推奨されるが、私は店に売っている草花ではなく、あえて、家の近くにある野草を植えてみたいと思っている。

 普段はあまり意識しないことだが、身近な草でも面白い葉の形をしていたり、小さくも綺麗な花を咲かせたりするものだ。生姿鉢のその獣的なフォルムは、野草の着飾らない自然な植物と相性が良いと私は思う。

 私は生姿鉢の背中に土を詰め、ベランダに放してやった。土には種を入れてなく、風が運んでくる野草の種を待つという形である。

 いずれ背中に芽吹く生命の存在を楽しみに待ってかどうか、生姿鉢はその円形で真っ平らな顔を歪ませて、私に微笑むのであった。

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