　有史以前の古くの時代から、人々の営みの中では「不死なる怪物」の存在が言い伝えられてきた。

　ほとんどは創作か信仰的な象徴だとして、もしそれらの中にゾンビが含まれているのだとしたら、彼らがこの地球上にいつ現れたのか、はっきりとその起源を明らかにすることは難しいだろう。

　ゾンビ退治のプロフェッショナルである世界退魔協会でさえ、ゾンビの正体に関しては完全に把握していない部分の方が大きい。

　だが、生物がどのようにしてゾンビと化すのか。それだけは判明している。

　ゾンビは悪魔的な儀礼によって呼び出された霊が取り憑くことによって成る生き物ではない。ゾンビとは究極のところ、「ある細菌類が感染した生物」を指すのだ。

　細菌は宿主の手を介して、爆発的な速度で増殖し、その生物をまったく別質のナニモノかへと変貌させる。また、これもはっきりと分かったことではないが、空気中に漂い、それを吸った者をゾンビ化させる変異種まで確認がされている。

　退魔物質はとどのつまり、これらの細菌を除菌するもの、人工的に作られた特効薬なのだ。

　新幹線の車内アナウンスを耳にし、座席に背を預けていた土屋（ツチヤ）は目を覚ました。

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