2024.05.27──イ道教室
六幹彩羽は移動教室でいつものように廊下を歩いていたが、段々と変な感覚を覚え始めた。
その廊下は、毎日のように歩く見慣れたはずの学校の廊下なのに、なぜだか初めてきた町の薄暗い路地裏を歩いているような、そんな居心地の悪さと得体の知れない不安を彩羽は感じた。
彩羽は段々と、違和感の正体を暴き始めた。まず廊下には自分以外の生徒、先生の気配が一切なかった。次の授業は移動教室でこの廊下を進まねば辿り着けないはずなのに。
そして窓から差し込む太陽の光が、異様なくらいに明るかった。あまりの光量により外の景色は真っ白で何も見えず、強い光によってもたらされる深い影が、廊下に重苦しくのしかかっている。
そして廊下の道自体も、どこか変だ。床は大袈裟なくらいにワックスでピカピカで、さらにはバリアフリー用の手摺が廊下の奥までずっと続き、その手摺すらピカピカで光沢がある。廊下も校舎も元々人工物のではあるが、あまりにも作為的過ぎて、逆に人間味が薄いような、そんな気持ち悪さがある。
彩羽はずっと廊下を歩き続けていたが、段々頭が重くなっていくような気がした。視界もグルグルと回っていく。回る視界に不気味な景色が反射して、さらに頭は重くなり視界は回る。
やがて世界は高速回転し、彩羽の意識も暗転した。
次に彩羽が目を覚ましたのは、移動教室の真ん中の席であった。自分の周りは他の生徒も居て、黒板の前では先生が熱弁を奮っている。
今までの出来事は変な夢だったのか、と彩羽は思ったが、彩羽が寝ていたことを、先生も生徒の一人も、言及する者は居なかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます