2024.03.06──二枚の葉書、二人の親友

 こいつは困った。私は団地の集合ポストから取り出した葉書を見て硬直した。

 それは高校時代の親友の実里から届いた、結婚披露宴の招待状だった。あたしも実里ももうすぐ三十。知り合いからこういうものが届く年齢になったのだと思うと何とも言えない切なさが募る。

 だがあたりが困っているのはそういう理由からではない。あたしが持つもう一つの葉書が問題なのだ。

 それは、大学時代の親友である奏美からの結婚披露宴の招待状だ。

 まさかの二通目。しかも開催日がダダ被りなのである。これは本当に由々しき事態ぞよ。

 実里も奏美も、掛け替えの無いあたしの親友だ。当然どっちの披露宴にも行きたいし、二人とも祝ってあげたい……となれば、最早残されている道は一つだけである。開催日当日に、両方の会場を往復するのだ。

 あたしは改めて目の前の二枚の葉書を凝視する。二人とも、卒業後に他所の県に引っ越したという話は聞いていない。つまり結婚相手も地元で出会った人物であり、披露宴も地元で行うはずだ。だからこうやって住所を見比べる。

 ……ん? 待て、この住所は……。



 披露宴当日。あたしはこの日のために購入したまったく似合わない高いドレスに着られて、地元にある大きな教会に来ていた。ここで結婚式が行われる予定になっている。

 会場には実里の知り合いが大勢来ていた。中には高校のクラスメイトも居たため、あたしはその子達と話しながら実里を待った。

 そして、会場には奏美の知り合いが大勢来ていた。中には大学のクラスメイトも居たため、あたしはその子達と話しながら奏美を待った。

 そして、ついにその時は来た。教会に入ってきたのは実里、そして奏美だった。あたしが大枚叩いて買ったドレスの十倍はするだろう、白い純白のドレスを身に纏い、仲良く手を繋ぎながら、神父さんの前まで歩いていく。

 高校の親友と、大学の親友。

 この二人の間には、直接の繋がりは無かった。それが今、これから同じ時間を歩んでいこうとしている。

 そんな運命のいたずらとも、気まぐれとも思える現場に立ち会ったあたしは、感動を覚えると共に、やはり何とも言えない切なさを感じるのであった。

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