2024.05.14──忍・任
忍の里に眠る秘伝「煙ノ書」がデータベース化されネットに漏洩されてから1年。日本の犯罪報告件数は例年の十倍以上に膨れ上がっていた。
煙ノ書に記載された術を身に付けた犯罪者、通称「ゲ忍」は、通常では侵入不可能の宝石店に入り込んだり、ビルの屋上から空を滑空したり、警察犬の追跡を完全に振り切ったり、通常の捜査体制では対応不可能の動きで、警察組織を翻弄した。
日本政府はゲ忍達に対抗するため、押収した煙ノ書のデータを活用し、公安の中で忍者の育成を始めた。忍の術を叩き込まれた警官や自衛官達は「ジョウ忍」と呼ばれ、2年もすればジョウ忍の数は1,000人以上に登り、国内外犯罪組織への切り札として十分な戦力に成長を遂げた。
だが懸念事項があった。政府が押収した煙ノ書のデータには、不足があるのだ。ネットに公開されていた時には目撃情報もあった「終ノ章」が、政府が動いた時には既に削除されていたのだ。
国内外に勢力を伸ばすゲ忍の誰かが、この終ノ章を所持しているというのが公安の見解だ。ジョウ忍達はゲ忍に対抗するのと並行し、この終ノ章の回収も命じられている。
かくして日本は、影の者が表世界を蝕む、黄昏時のような時代を迎えた。
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