2024.04.13──再会
食田泰茂はいつものように重いキャリーバッグを引っ張りながら歩いていると、ふと周りの景色に妙な違和感があることに気付いた。
いや、違和感というより、それは既視感だった。自分は確かに、この風景を見たことがある。それも一度は二度ではなく、何度も、習慣的に。
泰茂はキャリーを近くの木に立て掛け、改めて辺りを観察する。そこは、子供の頃に暮らしていた町の景色にそっくりだった。水色に塗装された十階建ての建物が連なる団地。近くには線路が引かれており、線路沿いを歩けば自分が通っていた小学校に辿り着く……そんな景色に。
だが、ここがその町であるはずはない。まずここは外国だし、団地の建物は自分が越す前に茶色く塗り直されたし、通っていた小学校は廃校となり今では資料館として建て直されている。
ならばどうしてここまで、この町に既視感を覚えるのか。泰茂はキャリーを立て掛けた木に自分も寄り掛かった。
瞬間、泰茂はあることに気付き、飛び上がるように木から離れた。そして、その木を見つめた。
間違いなかった。その木は間違いなく、自分が住んでいた町に、植えられていた街路樹そのものだった。
日本の町から遠く離れたこの国の町に、その木はあの日とほとんど同じ場所、同じ角度、同じお大きさで、植え直されていた。
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