2024.04.14──知らない配達
馬堀花瀬が自宅で寛いでいると、配達員がチャイムを鳴らした。出てみると、彼は両手に収まる程よいサイズの段ボール箱を持っていた。
箱を受けとり判子を押して家の中に戻ってから、花瀬はそういえば最近何かを注文しただろうかと首を傾げた。普段からネット通販で大量に物を購入する癖が付いてしまっているため、何も考えずに箱を我が家に招き入れてしまったが、このサイズ感のものを注文した記憶を、花瀬は持っていなかった。
クッション材が詰まっているだけで、中にあるものはアクセサリー等の小物である可能性も考えられたが、手に持った時の重さから、中身は箱にピッタリと収まっているものだろうと推測した。その重さのものをあれこれ推理してみたが、結局、開けて確かめるのが早いと、花瀬は段ボールを閉じるテープにカッターナイフを当てた。
「痛い」
箱の中から、そんな声が聴こえた。
花瀬は箱を取り落とした。ごとん、と音を立てて箱が床に落ちた。
なんだ今の声は、幻聴か。花瀬がそんな淡い期待を持つ間もなく、床に落ちた箱が、ごと、ごと、ごと、と小刻みに動き始めた。
何かが居る。
何者かが居る。
箱から出ようとしている。
花瀬の喉の奥から悲鳴が上がりそうになった。
その瞬間、鍵を閉めていなかった玄関の扉がいきなり開き、先程の配達員が入ってきた。
「ああごめんなさい! この荷物、お届け先の住所が違ってました!!」
そう言うなり、配達員は箱をふんだくるように拾い上げると、そのまま家の外に走り去っていった。
後には、唖然とした顔で立ち尽くす花瀬だけが残された。
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