2024.07.18──異能検挙④

 都市化が進み、野生動物の棲家が奪われ、多くの生物が絶滅しても、この世から人間以外の生命体を完全に除くことは出来ない。

 都会の路地のわずかな隙間には苔が生え、その苔の中にはクマムシや線虫などの微小生物が多く生息している。下水道を流れる水の中にもミドリムシなどプランクトンが繁殖し、そして空気中には目に見えない多くの細菌、ウィルスの類いが漂っている。

 言わばこの地球上は微生物のプールのようなものであり、人間はその中に浸りながら暮らしているのである。

「その微生物と会話が出来る……それがの異能だ」

 鳥林がそう言い、依然困惑が止まない德馬に説明を続ける。

「彼は近くに浮いている微生物に話しかけ、そこで伝えた内容は微生物プールの中で伝言ゲームのように拡散されていく。彼はそうして、人の目が届かない情報も広範囲から収集が出来るんだ」

 鳥林の説明に德馬が目を見開いた。

「……じゃあ、なんだ……? 俺達のアジトをてめェらにバラしたのは…………そこらへんの空気に浮いてるカスみたいな生き物だってのか……?」

「その通りだ」

 德馬は顔を覆い、二、三歩後ろへよろめいた。

 そして、


「──なめるのも大概にしやがれェエエエエエッッ!!!」


 激昂と共に、德馬の身体が黒い岩石のように盛り上がった。

 鳥林は咄嗟に拳銃を発射したが、弾丸は德馬の身体に命中するも傷一つ付けずに弾き返された。


 そして次の瞬間。

 德馬の右手から伸びた黒い爪によって、鳥林の胴体が両断された。

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