2024.01.04──白い町

 旅とは意外なことの連続だ。本日ならこのような具合に。

 私は今真っ白な町の中を歩いている。建物も、道も、街路樹の幹や葉ですら真っ白だ。

 人間は私以外ひとりも見当たらない。コツコツコツと足音を立てて歩く私の影が、白い道をわずかに灰色に染めている。

 歩き疲れ、私は白い建物の白い壁に身を預ける。鞄の中から取り出した水筒で喉を潤すと、私は何の気なしに空を見上げた。

 驚いた。町の中に何の色味もないわけだ。

 町の上空は、多くの色で溢れていた。濃い青を基調に赤、ピンク、黄色、緑と、滲むようなグラデーションを描いている。全ての色は、空に吸い込まれていたのだ。

 もっとよく目を凝らすと、所々にプカプカと浮かぶ黒いものがある。それは人だ。みんな気持ち良さそうに空を飛行している。色味のない町を歩くよりは、そっちの方がマシなのだろう。

 出来ればその中に混じってみたいところだが、私は先を急ぐ旅人だ。グッと堪えて、色味のない町を再び歩き出した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る