2024.10.20──バラ売り

 すっかり肌寒くなった道中を歩いていると、不意に頭上から大きな布のようなものが落ちて来た。

 危うくそれを避けることが出来たが、目の前に落ちた布は、なんとも不思議な物体であった。その布は青空が描かれていて、さらに時折白い雲が通り過ぎることから、描かれた空が映像のように動いていることが分かる。

 手で持ち上げてみると、絹のように滑らかな手触りで、重さはほとんど感じない。カーテンに使用するには細く、テーブルクロスとしては大きい、なんとも微妙なサイズ感だ。

 流れる空の映像から、布ではなく、薄いスクリーンのようなものという可能性もある。家の壁に飾れば、室内で青空を眺めることが出来るかもしれない。これは思わぬ掘り出し物だと、その布をクルクルと丸めて、肩に担いで頭上を見た。

 見上げた先の本物の青空に、妙なものを見つけた。一面に広がる青空のほんの一部に、長方形型の小さな黒い穴があったのだ。

 その穴のと、今自分が担いでいるものとの整合性に気づくのに時間はかからなかった。そして、黒い穴から空中に均等に亀裂のようなものが入り、バラバラバラと、長方形型の小さな空が、地上に降り注いできた。

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