2024.01.26──妖怪対策課
市役所の妖怪対策課に勤める金森実子は、重い捕獲用のケージをバンに積め終えると、本日の現場である里山町へと向かった。
通報があったのは十分前で、すぐに妖怪捕獲のプランを立て、人員を配置する場所や周囲の警察署や消防署に協力の電話を掛けた。妖怪というものは神出鬼没だ。どんなタイミングでも、職員は現場に万全の準備をして現場に駆けつけなくてはならない。
市役所からバンを20分程走らせ現場に到着する。山と川、田んぼに囲まれた静かな場所で、大きな建物もなく、昔ながらの古民家が立ち並ぶ町だ。昨今は都市部に妖怪が出没することが社会問題になっているが、現場の人間が妖怪を目にするのは現代になってもこういう土地が主である。
他の場所に配置した職員と無線で連絡を取り合いながら、実子は市役所から持ってきたケージを仕掛けていく。今でこそ妖怪が潜んでいるような場所は経験から分かるが、入所仕立ての頃はケージを適当に置いて先輩に大目玉を喰らったものだ。
ケージを置き終わり、実子はバンの近くに戻った。妖怪が活発的になる時刻まであと数時間はあるため、その間に周囲の調査を進めようとバンのドアに手を掛けた。
その瞬間、誰も乗っていないはずのバンが急に発進した。
実子は仰天したが、すぐに落ち着いて、遠くに去り行くバンを見やった。運転席に、何かグネグネと蠢く黒いものが見える。
やられた! 妖怪は自分が不在の隙にバンに乗り込んでいたのだ。
実子はすぐさま周囲の車道を封鎖するよう職員に通達し、警察署にも電話を掛け緊急体制を引くようお願いした。
素朴な田舎町には似つかわしくない悪知恵の働く妖怪。この仕事は明日の昼頃まで掛かることを実子は覚悟した。
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