2024.02.27──紙頼み
物事の電子化が著しい昨今、データの流出やコピーも容易になっていることから、本当に重要な情報は逆に紙に記して保存することがある。
特に俺のようなスパイは、掴んだ情報をPCやスマートフォンに記録するようなことはまずやらない。機械を奪われれば情報を引き出される危険性が高いし、データを削除しても技術のある奴なら復元をされてしまう。
その点、紙は細かく折れば肌身離さず持ち歩くことが出来るし、燃やしたり飲み込んだりしてしまえば情報は完全に消去することが出来る。ローテクノロジーが最新技術に勝る一つの例だ。
もちろん、情報を物理的に持つことになるため、それの管理をコンピュータではなく己の責任で果たす必要はある。気を抜けば、情報というものはどんな形で無くなってしまうか分からないのだ。
そう……重要機密が書かれた紙を、五歳になる息子に取られ、それで紙飛行機を折られて窓からぶん投げられた俺のように。
俺は走った。今まで現地軍に追われたり、発車した電車に飛び乗るようなこともしたが、その時よりも全速力で走った。
それで何とか、人の多い場所に着く前に紙飛行機をキャッチ出来たわけだが、妙齢の男が紙飛行機を真剣に追う姿はさぞ目立ったことだろう。スパイ生活二十年目にしてなんという失態だ。
今回の失敗は私の不注意によるところが大きいが、それに加えて、普段息子に構ってやれず家内に任せっきりな点も原因だと反省した。息子にはすぐに折り紙のセットを買って与えたが、きっと成長するに連れてどんどん新しいオモチャを欲しがるのだろう。
この子がPCやスマートフォンを扱える年齢になるのが待ち遠しい。これらの道具には暇を潰せるデータがいくつもあるのだから。
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