2024.07.03──奇虫deソサエティ
珍しい虫を求めてコンクリートジャングルに潜り早二時間。地上を徘徊する二足歩行型の虫に網を振るうも、逃げられるか威嚇や危害を加えられるかでまったく成果は出ていない。
終いには白黒模様の巨大な甲虫に終われ、今はジャングルの四角く冷たい木々の隙間に身を潜めて、危険が去るのを静かに待っている。
このまま安全になるまで立ち止まっていると、日が暮れてしまいそうだ。夜のジャングルは実に危険で、地上を多くの虫達が歩き始める。そうなる前に退散したいところだが、何の収穫も無しに帰宅するのはなんとも虚しい。研究とは一日一日の成果を積み重ねて大いなる結果を産み出すもので、成果がゼロの日は出来るだけ少なくしたいのだ。
そこでふと、視界にあるものが映った。体が深い毛で覆われ、四足歩行で進んでいる初めて見る種の虫だ。これはなんとしても捕らえたい。
木々の隙間から腕だけ出し、相手が気付く前に網を下ろせないかトライしてみる。慎重に、焦らず、しかし素早く。
試みは上手くいった。その珍しい虫は網の中にすっぽりと収まり、ジタバタと暴れ始める。そいつを逃がさないように網を手元に引き寄せ、虫を押さえつける。しめしめ、これだけでも今日ジャングルに潜った甲斐があったものだ。
そんな時、急に背中に何かがぶつかった。振り向くと、そこには二足歩行型の幼虫が、石を持って立ち尽くしている。
何故ここがバレたのかと不思議に思ったが、つい今手にしている新種の虫の首に、チリンチリンと鳴る鈴が取り付けられていることに気付いた。しまった、この音が引き寄せてしまったのか。
だが幼虫サイズなら網で捕まえることは可能だ。思いきって木々から身を出し、その二足歩行型へ網を振り下ろす。
しかしその矢先、横から強い力で身体を拘束され、地面に押さえ付けられてしまった。自分を押さえているのは、あの白黒甲虫と共生している青い二足歩行型の虫のようだ。
こうして網は没収され、新種の四足歩行型にも逃げられ、白黒甲虫に捕食されることと相成った。
だが、コンクリートジャングルにはまだまだ未知の虫が居ることが分かった。白黒甲虫の巣から脱出したら、再び昆虫採集に出向くとしよう。
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