2024.06.15──魔を退ける者⑮
しかし古墳には登ろうとせず、ただその周りをグルグルと歩き続けている。見晴ヶ丘古墳は巨大な円墳で直径は100m近くあり、その円周ともなると結構な距離だ。
どんどん早歩きで進んで行く土屋を追いかけ、息を切らしながら梨本が言う。
「おい! まだ山の方には入らねぇのかよ? 今日中に退治するったって、こんなことしてたら日が暮れちまうぞ」
「
土屋は足を止めずに返答する。
「昨夜の私の調査、また貴方の半日以上を掛けての調査にも関わらず、ゾンビの痕跡すら見つけることは出来ませんでした。あれだけ藪深い山中に折れた枝すら見つからないというのは、そこに潜んでいるとは考えにくい」
「……じゃあなんだ? 酒井の分析が間違ってるってのか?」
「そうは言っておりません」土屋が断言する。「あくまで藪の中に居る可能性は低いと言ったのです。それでも、やはりゾンビはこの古墳の中に居ると、私は確信しております」
「どういうことだ? 藪の中じゃあなけりゃ土の中に潜ってるってのか? それとも洞窟でも……!」
話している途中で、梨本は目を見開いて立ち止まった。それを見て、土屋は満足そうに微笑んだ。
「そう……古墳の中ですよ」
そこで土屋も立ち止まり、ある一点を指差す。
木の枝や落ち葉で覆われたその場所は、荒い石のブロックのようなもので組まれた入口のようなものがあり、その前に近代的な金網のゲートが貼られている。
金網には注意看板が掛けられていた。そこに書かれている文言は、こうだ。
『見晴ヶ丘古墳 石室発掘跡 重要指定文化財にて関係者以外立ち入り禁止』
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